あの日、あの時、あの場から~人生は出逢いで決まる③~ 

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首も打っているので2、3日湿布して様子をみて…

救急車両に早変わりしたバスで、一人診療所に運ばれた私は、問診の後、レントゲン撮影をはじめ、一通りの検査をしました。

そして、担当の医師から「特に異常はないですね。出血も止まっているし、ただ、肩を打撲しているので、湿布薬を出しておきます。これで様子を見てください。」と言われました。

検査の途中からは、バス会社から連絡を受けた親戚の叔父さんが、車で迎えに来てくれていたので、診療所から叔父さんの家に向かい、そこでともかくも安静にすることにしました。

バス会社の上役の人も診療所に来て、そのまま叔父の家まで同道し、改めて私と叔父。叔母に謝罪したうえで、また、出直すとのことで引き揚げていきました。

 

その後、しばらくは居間でお茶を飲みながら、「大した怪我でなく良かったね」に始まり、高校受験のことや入学後のことなどが話題となり、やれやれといった感じで一息ついていたのですが、「でも、少し横になっていたほうがいい、なにしろ頭を打っているのだから」との言葉で、言われるがまましばらく横になることにしました。

 

布団には入りましたが、興奮状態だったためか、頭の中でいろいろなことが思い起こされ、とても眠るというわけにはいきません。

そして小一時間ぐらい経った頃でしょうか、何か頭がズキズキ痛くなってきて、首の辺りも突っ張っているような不快な感じに襲われてきました。少し吐き気も催してきたような…。

 

だんだん我慢できなくなった私は、叔父叔母にそのことを告げました。

すると、叔母の「だからあんな町はずれの流行ってない診療所なんかじゃだめだと言ったんだ!町のちゃんとした整形外科に診てもらわないと!」という言葉に従い、叔父はまた私を車に乗せ、街中でビルを構えて、いかにも流行っていそうな整形外科病院に私を連れて行ってくれました。

そしてまた一から検査のやり直し。

それだけで疲れてしまいました。

検査後の診察で、お医者さんは私に「たいしたことではないと思いますよ。熱は少しあるようだけど、血圧も正常だし。ただ、突然のことでビックリして、ショックを受けたので、興奮しちゃって頭痛がしているのだと思う。でも、首も打っているようなので、とりあえずは2、3日湿布して様子をみて。で、横浜のほうに帰ってから、調子が悪いようなら、そちらのほうでまた診てもらいなさい」。

 

なんとも今考えると、いい加減なお医者様だったとは思いますが、「たいしたことではない」との言葉をすっかり信用し、その後数日間、首に湿布の包帯を巻きながらも、しばし田舎での寛ぎの時を過ごすことができました。

確かに、首や頭の痛みも、しだいに薄らいでは来ていたので。

そしてアクシデント含みの小旅行も終え、3月末に、迎えに来てくれた父に伴われて横浜の自宅へと戻ってきてからは、4月から始まる憧れの高校生活に思いを馳せ、前途洋々とした気持ちで入学式を待ち望む日々を送りました。

その時の私は、この事故での怪我が、その後の自分の人生に、大きく影を落とすことになることなどは想像だにせずに…。

(つづく)