シンガポール事情:兵役編その4

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新兵が集められた道場で、インド系の兵士がスケジュールを読み上げ終えると同時に、シンガポール国歌が流れ、それがPulau tekong島での4ヶ月間の軍隊生活の始まりの合図となりました。

全ての説明が終わった後、明日は長い一日となるので、今日はゆっくり宿泊施設で休みなさい、と優しい口調で言われました。

その時の兵士の口調が妙に優しかったので、私は少し嫌な想像をしてしまいました。

夜中にでも叩き起こされるのかと。

というのは、Pulau tekong島に来る前に、友達から、軍隊では夜中に急に集合をかけられ、わけもなくトレーニングをさせられることもあるよ、と言われていたからです。

道場から5分ほど歩くと、私たちの宿泊施設がありました。施設を見た瞬間、お化け屋敷じゃないのか、と怖さを感じました。

(後で知ったことですが、宿泊施設で新兵の自殺者も出たらしいのです。)

 

宿泊施設は設備が良くなく、窓ガラスやドアも薄汚れていました。 

エアコンやヒーターもなく、まるであばら屋みたいでした。

 

宿泊施設は3階建てで、各階4部屋あり、一部屋に10人ずつ入りました。

私は2階の3号室で他の9人と一緒に暮らすことになりました。

私達は荷物を整理し、翌日に向けてその日は身体を休めました。

私は、意外にもぐっすり眠ることができました。

 

すると、大きなサイレンの音で、私たちは目を覚ましました。

時計を見ると、午前5時!

一階には、「水筒を持って、早く下に降りろ!」と怒鳴る兵士がたくさんいました。

私は、なにが起こってるいるのかわからなかったけれど、みんなと一緒に一階に降りて、

眠そうな顔で、次の合図を待っていました。

3階の新兵たちは、時間に遅れないように、必死で駆け降りてきました。

 

新兵が全員集まると、まず水筒の水を500ml飲まされ、次にストレッチをし、それから5BXという運動をしました。5BX(Five Basic Exercises)とは、腕立て伏せ、腹筋, スクワット、ジャンピングジャック、 ハイジャンプの5つの基本的な運動で構成されています。

私は朝の運動なんて初めてだったので、体がもうヘトヘトでした。

その後に食堂に行き、朝食をとりました。

期待はしていませんでしたが、なんとメニューがいつくかあり、量なども選ぶことができるブッフェ式でした。

ところが、担当の兵士から「食事時間は10分!」と言われ、「え!せっかくのブッフェなのに!」とがっかりしました。

私は、ソーセージ、パンと卵、飲み物はマイロというホットチョコレートみたいな味のする飲み物を飲んで、10分以内に完食しました。

普段、私は朝ご飯を食べなかったので、朝食も少なめで10分以内に食べきることができたのです。

 

朝食後は宿泊施設の掃除タイムです。

トイレ、部屋の窓、廊下などそれぞれに割り振られたのですが、その担当はなんと4か月間変わりませんでした。

私はトイレ掃除の担当だけにはなりたくなかったのですが、運良く、トイレ担当には選ばれず、一番簡単な部屋の窓担当となりました。

掃除後は綺麗になっているのかチェックがあり、初日なので注意点をいわれ、次の日のチェックに落ちれば、また掃除のやり直しと腕立て伏せの両方をしないといけない、と警告されました。

初日のため、それ以上の運動はなく、説明会ばかりで退屈でした。

昼食も夕食も、10分で済ませ、やっと長い一日が終わりました。

今までの人生の中で、一番長い一日でした。

                             (つづく)