創作読物 3「身体と心って、密接」

 

前回は、こちらから。

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「じゃあ、まずは右の太ももの裏から指で押して、

 筋肉のロックの状態を看ていきますね。

 力を抜いてリラックスしてくださいね。」

「はい。」

「さて、ここはどうですか?」

「痛いです。」

「ここは?」

「あ、痛い!そっちのが痛いです!」

「じゃあ、膝を曲げますよ…。これでどうですか?」

「痛くないです…。先生、ほんとに同じ場所ですか?」

「ははは。おんなじ場所ですよ!」

「不思議ですね。」

「では、このまま90秒キープしますね。」

「はい。」

「この前よりは、ちょっと柔らかくなってる気がしますね。」

「ほんとですか?」

「ええ。人によっては10日も経つと、また元に戻っちゃう人もいるんですが…。」

「人によって違うんですか?緩み方が…。」

「違いますよ。人それぞれです。性格に個性があるように、筋肉も個性的ですよ。」

「へえー、そうなんですね。」

「よく、彼は個性的とか、彼女は個性的な人って、言ったり聞いたりしますけど、

 飯塚さんはそういう時、その人のことをどう思いますか?

 どんな印象を持ちますか?」

「え…?そうですねぇ。なんか変わってる人…とか思うかな…。」

「逆に、あこがれというか、ああいう人になりたい、なんて人もいませんか?」

「あ、そうですね。そういう場合もありますね。」

「飯塚さんの筋肉は、緩みやすいのかもしれませんね。

 筋肉がコチコチに固くなって、なかなか緩まない人にとっては、

 あこがれの的かもですね(笑)。」

「それなら良かったです。」

「はい、ではゆっくり足を元に戻しますので、ご自分では力を入れずに、

 ゆだねてくださいね。」

「あ、はい。」

「さあ、ここでしたね、もう一度押しますよ。痛みはどうですか?」

「ああ、全然違いますね!痛くないです!」

「では、ここはどうですか?」

「痛くないです。」

「ここは、最初に押した所ですよ。さっきは痛かったですよね?」

「そうですね。あれ、なんでだろ?」

「一ヵ所緩めたことで、その近くの筋肉も緩んだんですね。

   やっぱり飯塚さんの筋肉は緩みやすいのかも。」

「ロックが外れやすいということですか?」

「そうです。」

「じゃあ、治り易いということですか?」

「そうですね。施術することでロックしにくくなるといいですね。

 ロックの箇所が減れば、体調は良くなると思いますよ。

 同じことをしても疲れにくくなるし。」

「そうなってくれれば、嬉しいです。」

「では、もう少し探りますよ。」

「はい、お願いします…。

 あ、そこはちょっと違和感があります。」

「はい、じゃ、緩めるポーズを取りますよ。これではどうですか?」

「あ、大丈夫です。」

「はい、では90秒このままです。」

「あ、はい。

 あのう、ホームページで見たんですけど…、

 先生は学校の先生をされていたんですか?

 それも高校の校長先生?」

「ええ、そうですね。」

「すごいですね!」

「すごくなんかないですよ(笑)。」

「すごいですよ、校長先生でしょう?」

「校長にもいろいろいますから(笑)。

 確かにすごい校長もいれば、そうでない校長も(笑)。」

「え?そうなんですか?」

「そうですよ(笑)。」

「本当かなぁ…。先生はどっちだったんですか?」

「ご想像にお任せします(笑)。」

「うーん、すごい校長先生!」

「何でですか?」

「なんか、説明が上手だし…。」

「そうですか(笑)。」

「先生は、カウンセラーもなさるんですか?

 これもホームページに書いてありましたよね?」

「カウンセラーというと大袈裟ですが、こうして施術しながらお客様と

 お話することでも、案外癒し効果もあるんですよね…。

 身体と心って、密接でしょ?

 どこか痛いとか、悪いところがあると、どうしても元気なくなるし、

 逆になんかに悩んでたりすると、体調が悪くなったりね。寝不足になったり、

 それで頭痛になったり…とか。」

「ほんとそうですね。」

「だから、ミオンパシーで身体だけケアしても、それだけでいいのかなあ?

 と思って…。

 こうして施術しながら、他愛のない話でもさせてもらっているうちに、

 なんか、お客様がほっとしたり、心身ともにリラックスしたり…、

 癒しってそんな感じなんじゃないかと思って。」

「そうですね。先生とお話していると、何となく安心するというか、

 落ち着きます。」

「そうですか。ありがとうございます。

 でも、そうではなくて、面と向かって相談に乗って欲しい

 というお客様がいらっしゃれば、

 施術とは別にマンツーマンでもやりますが…。

 もちろん、マンツーウーマンでも(笑)。」

「そうなんですか…。どうしようかな…。」

「何か、お悩みですか?

 寝不足になるようなことがおありですか?」

「あ、はい、まあ…、そうですね。」

「まあ、悩みのない人はいないのでね。問題はその深刻度ですけど…。」

「実は、ちょっと深刻なんです…。

 いえ、私のことではなくて、娘のことで…。」

「そうですか…。ひょっとして不登校とか?」

「え、なんでわかるんですか?」

「当たりですか。いや、単なる勘ですが…。」

「え、なんでわかっちゃうんですか?」

「いや、学校長だったのかとか、カウンセラーなのかとか、聞かれたので…」

「え、それだけで?」

「まあ、山勘ですよ…(笑)。

 でも、どうされます?今日もしお時間があるようなら、施術後にお話を伺いますか?」

「…、そうですね。折角だからお願いしようかしら。」

「わかりました。じゃ、まずはフィジカル面のケアを先にやってしまいますかね(笑)。」

「はい、お願いします。」        (つづく)

 

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