創作読物 4「いじめが原因で・・・」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「どうもありがとうございました。」

「はい、お疲れ様でした。

 どうですか?少し楽になりましたか?」

「そうですね。なんか、からだが軽くなったような…。

 右足のだるい感じもなくなりましたね、お蔭様で。」

「なら、良かったです。さあ、お茶、冷めないうちにどうぞ。」

「あ、はい、ありがとうございます。いただきます。」

「では、ゆっくりでいいですけど、からだがリラックスしたところで、

 今度は、お気持ちのほうが人心地つけるといいですね…。」

「ええ、そうですね…。

 実は、そのう、一人娘のことなんですけど…。」

「お子さんはお一人なんですね。おいくつですか?」

「はい、今年の春、高校一年生になりました…。ただ…。」

「あ、飯塚さん、ここでの話は他の人には一切しませんので、

 安心してお話くださっていいんですよ。」

「ああ、はい、ありがとうございます…。」

「娘さん、お名前は?」

「あ、はるかって言います。」

「はるかさん…。どんな字ですか?」

「はるかのはるは、太陽の陽。かは香りの香です。」

「なるほど。どなたが付けたんですか?」

「陽は、主人が決めました。なんか、明るい子がいいと言って。

 香は私です。やはり女の子らしく、上品に育ってほしいなって(笑)。」

「そうですか。朗らかで上品な子になってほしいと…。いいですね。

 陽香さんは、ご両親のその名前に込められた想いを知ってるんですか?」

「ええ。小学生の頃に、本人が興味を持って聞いてきたので話しました。」

「陽香さん、何か言ってましたか?その時。」

「いやあ、ふーんって感じでしたね(笑)。」

「そうですか。でも、どうですか?名前に込めた想いの効果のほどは?」

「そうですね。あまり上品に育ったとは言えませんが(笑)、

    中学2年生までは、ほんとに明るく、よく笑う子だったんですがね…。」 

「でも、今は訳あって、明るさは発揮できてない、ということですか?」

「そうですね…。

 実は…、中学2年生の時に、クラスの子たちからいじめられて…。

 それも、陽香が親友だと思って付き合っていた子が中心になって…。」

「そうですか。」

「それ以来、陽香は人間不信ていうか…、

 友達恐怖症みたいになってしまって、

 結局、卒業するまで、ほとんど学校には行けなくなってしまって…。」

「ほとんど…、ですか?」

「中3になってクラス替えがあって、4月の半ばぐらいまでは、

 保健室登校っていうんですか?お昼前の1時間程度は保健室に

 行ったりしてたんですけど…、

 保健室の先生も、なんかすごく忙しくて、

 あまり、相手にしてもらえなかったようで…。」

「4月5月は、健診とかで、養護の先生も忙しいですからねぇ…。」

「ええ、そうみたいで…。

 それで、もう保健室にも行かなくなって…。

 それからは、まったく行けなくなってしまって…。」

「行けなくなったのか、行かなくなったのかは微妙ですけどね。」

「そうなんですか?

 でも先生、今はそんな感じで、中学校にろくに行ってなくても、

 受け入れてくれる高校ってあるんですねぇ?」

「陽香さんの高校進学は?」

「ええ、担任の先生と相談して、先生の勧めで定時制の高校

 に何とか…。」

「そうでしたか…。定時制の生徒の中には、

 不登校経験者も多いですからねぇ。

 もちろん、不登校のレベルというか、

 不登校期間の長短はいろいろですが…。」

「なんか、そうみたいですね。初めにそれを聞いた時は、

 びっくりしたというか、ちょっと不安になって…。

 だから、そういう子たちって、ちゃんと通えるように

 なるんですかねぇ?と、聞いたんですよ、担任の先生に。」

「そしたら何て言いました?担任の先生。」

「まあ、いろいろですと。

 心機一転で不登校から脱出できる子もいれば、

 再発しちゃう子もいると…。」

「まあ、確かに…、いろいろな条件が重ならないとねぇ…。

 で、陽香さんはどうだったんですか?」

「ええ。残念ながら再発しちゃって…。」

「そうですか…。」     (つづく)

 

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