創作読物 7「当たり前って、その時々で変わる」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「学校は絶対?って…。

 それは、学校は絶対に行かなければいけない所?ということですか?」

「ええ、まあ、そういう質問だと受け取ってもらってもいいですが…。」

「…、絶対に行かなければいけないか…、と聞かれると…、

 ちょっと答えに困ってしまいますけど…。」

「なるべくなら、行った方がよいと?…。

 行かないよりは、行った方がよいと?」

「そうですね…、そう思います。

 それって、良くないことなんですか?

 親だったら、普通そう考えるんじゃないですか?」

「ええ、ほとんどの親御さんはそう考えると思いますよ。」

「だって、学校って、やはり行った方がいいでしょう?」

「でも、そう考えない親御さんというか、時代もあったんですよね。」

「え?そうなんですか?

 いつですか?それは…。」

「江戸時代が終わって、明治になって、学校ができた頃ですよ。明治初期。」

「え?そんな昔のことですか(笑)。」

「あ、ええ、まあ(笑)。

 でも、当時の親は、なんで子どもは学校に行かなくていいと…、

 いや、むしろ、行かせなかったんだと思いますか?」

「行かせなかったんですか?…さあ…。」

「単純に言えば…、

    勉強よりも家の仕事が大事。貴重な労働力だったわけですね、子どもたちが。」

「なるほど…。

 でも、それって昔の話ですよね?明治初期だから…、

    えっと、もう150年も前の…。」

「そうですね。

 ただ当時は、学校で勉強することより、家の仕事を手伝うことのほうが大事で、

    子どもとして当たり前のことだったわけですね。」

「ええ。」

「そして、今は逆に、家の仕事を手伝うことより、

    学校に行くことが大事で当たり前、と思われているわけで…。」

「・・・・・。」

「当たり前って、その時々で変わるってことなんじゃないでしょうか?」

「…でも、今は明治時代とは違うので、

 やはり学校行って、ちゃんと勉強しないと駄目なんじゃないでしょうか?」

「今は、家のことよりも、まずは勉強、というのが主流になってますからね。

 でもどうなんでしょう、明治時代は、勉強より家の仕事が大事。

 でも今は、家の仕事の手伝いよりも勉強の方が大事。

 変な話、勉強されしていれば、親御さんは安心して…、

 家の仕事の手伝いはいいから、あなたは勉強してなさい、

 と思っている親御さんは多いんじゃないでしょうか?」

「確かに、そう言われれば、私もどちらかというと、そうかなと。」

「でも、本当は、両方大事ですよね?(笑)。」

「まあ、確かに、そうなんですけど…。」

「けど?」

「あ、いえ…、まあ、両方大事だとは思いますが…。」

「両方大事だとは思うけれども、そんな家のことなんかしていたら、

 思うように進学できないと?」

「まあ、そうですね。」

「まあ、今はそう考える親御さんのほうが圧倒的に多いんでしょうね。」

「でも、今の時代、ある程度仕方がないんじゃないでしょうか?」

「ええ。でも、その仕方がないということで、流されちゃうことって

 ありますよね。」

「とおっしゃると?」

「ほんとは、そこでちょっと立ち止まって、ほんとにこれでいいのか?

 と考えることが大事なのかと思うんですけどね。

 できれば、お子さんも交えて…。」

「子どもも交えて?」

「ええ。だってお子さんのことですからね。

 ただ、それをするには機が熟さないといけないので…。」

「そうですね…。でも、今は無理ですね。

 なんか、ちょっと私自身混乱してきちゃって…。」

「あ、すみませんね。」

「あ、いや、いえいえ。」

「ただ、まずは、親御さんがお考えやお気持ちを整理することが…。」

「ええ、そうですね…。

 ただ、今まで娘のことを相談すると、

 たいがいの先生は、どうやったら学校に行けるようになるか、

 あれこれアドバイスしてくださる先生が多かったので…。」

「私と話して、ちょっと混乱しちゃいましたか?(笑)。」

「あ、いえ(笑)。

 でも、今まであまり考えなかったことを、考えなきゃいけないのかなと…。」

「どう思います?」

「ええ、でもやはり、いろいろと考えなきゃいけないんですよね?(笑)。」

「悩むんじゃなくて、物事を整理するために考えることは、いいんじゃないですか?」

「ええ、それはそうですね(笑)。」

 

つづく

 

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