創作読物 12「言葉掛けって、いろいろある」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「お疲れ様でした…。

 どうですか、ちょっと頭痛は軽くなりましたか?」

「ええ、それが不思議なんですけど、

 施術受けてる途中から、あまり感じなくなって…、

 今は、もう大丈夫です。ありがとうございました。」

「そうですか、それは良かったです。

 やはり、背中もかなり来てましたからね。」

「そうですか?

 でも今は、なんか、こうやって上半身動かすのもスムーズというか。

 頭にも響きませんし。」

「楽になりましたか?

 あとは、その状態がどの程度続くかですけれど…、

 まあ、ロックが外れていけば、徐々に良くなっていくと思いますよ。」

「あ、あと…、

 首の後ろの上の方を、両手の指立てて支えてもらったじゃないですか。」

「ああ、あれは頭痛持ちの人には効くことが多いので。」

「ええ、なんかとても気持ち良くなって…。」

「そうですか。

 それから、最後にちょっとお伝えしたセルフ・ミオンパシー、

 ご自分でできそうですか?」

「ええ、太もものところは簡単そうなので、

 早速、今夜からやってみます(笑)。」

「ええ、ぜひ試してみてください。

 えーと、じゃあ、ここからは先週のお話の続き、

 ということでよろしいですか?」

「あ、はい。お願いします。」

「さて、この1週間、どうでしたか?」

「ええ。

 なんか陽香に対して、私のほうが以前よりは落ち着いて

 接しられたというか…。

 学校のことも、私は意識して言わなかったんですけど…。

 でも、それは別に無理してるということではなくて、

 不自然にそうしてるというわけでもなくて…。」

「少し余裕が出た、ということですかね。」

「ええ、そうだと思います。」

「で、そんなお母さんの様子の変化に、陽香さんは気づいた?」

「いや、まだ1週間ですからねぇ。」

「でも以前は、どの程度学校のことを話してたんですか?」

「そうですねぇ…。

 だいたい、2日に1回程度かな?」

「それが1週間何も触れなかったとしたら、

 陽香さんも、何かしら気づくというか…、

 変化が起こってるかもしれないですね。

 直接、言葉や態度には現れなくても、内面の変化というか…。」

「そうですかねぇ。

 ただ、そう言えば…。」

「何かありましたか?」

「あ、ええ。

 おとといなんですけど、

 私が、あさって、また整体に行くんだと言ったら、

 へえ、また行くんだ…。効いてるの?

 いいなあ。私も最近、肩が凝っちゃって…、

 ママ、ちょっと揉んでくれる?って、

 自分から寄って来たんですよ。」

「へえ、なるほど。

 そういうことって以前はなかったんですか?」

「そうですね。

 肩が凝るとも…、まして私に揉んでくれなんて言ったことは…。」

「そうですか。

 で、お母さんは、その時なんて言ったんですか?」

「じゃあ、お皿洗ってくれたら、揉んであげるって。

 そしたら…、じゃ、いいって(笑)。離れて行ってしまって。」

「はは。現金ですね(笑)。

 じゃあ、結局、肩揉みは?」

「ええ。

 私が、ほんとは私が陽香に揉んでほしいわよ、って言ったら、

 だってママは整体行くんでしょ!って言って、

 そのまま2階の自分の部屋に上がってしまったので。」

「お皿は洗わずに?

 陽香さんは不機嫌そうでしたか?」

「お皿洗いはしませんでした(笑)。

 でも、別に不機嫌ということはなかったですね。

 階段上がりながら、鼻歌かなんか歌ってましたから(笑)。」

「そうですか…。

 お母さんね。」

「あ、はい。」

「あのう、皿洗いのリクエストをした時に、

 じゃあ、お皿洗ってくれたら、揉んであげるって、言うのと、

 じゃあ、ママと一緒にお皿洗ってから揉みっこしようか、と言うのと、

 どっちが良かったですかねぇ?」

「ああ、なるほど。

 そういう言い方があったんですねぇ。」

「うん。わかりませんけどね。陽香さんがどう感じるかは…。

 ただ、言葉掛けって、いろいろあると思うんですよ。」

「そうですねぇ。

 これこれやって!というのと、

 一緒にやろうか、ってのは、全然違いますもんね。」

「まあ、また今度機会があったら、言ってみてください。」

「はい。わかりました。ありがとうございます。」

 

(つづく)

 

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