創作読物48「人生の小窓を手に入れた」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「あ、でも、そろそろお母さんが迎えに来るのかな?」

「あ、そうですね。

 でも、連絡して、先に帰ってって、伝えます。」

「そう。」

 

「あ、もしもし、ママ?

 あのね、今、終わったんだけどね…、

 先に帰ってていいよ、一人で帰れるから。

 うん、そう。

 もう少し、お話してからね、一人で帰るから。

 うん、わかった。

 じゃあね。」

 

「お母さん、何か言ってた?」

「いえ、特には。

 気をつけて帰ってね、って。」

「そう。

 ところで…、

 陽香さんは、スマホはよく使うの?」

「え?スマホですか?」

「うん。」

「ええ。使いますね。」

「どんなふうに?」

「え?

 そうですね。

 InstaとかLineとか…、好きな歌を聴いたり…、

 YouTube見たり…、とかもですかね。」

「さっきみたいに、

 何かググったりとかは、あまりしない?」

「うーん。

 調べたりとかは…、

 あまりしない…、かな。」

「そっかぁ。」

「なんでですか?」

「あ、いやあ…、

 陽香さんたち、若い人にとっては、

 スマホとかは、もう当たり前に持ってて…、

 もう、もしかしたら、

 あまり、便利だなって感じることもないのかもしれないけど…。」

「ええ、

 そう言われると、

 当たり前すぎて…。」

「だろうね。

 でも、僕らの世代にとってはね(笑)。

 だいたい、携帯電話ってのが、最初に出た時は、

 食パンみたいな大きさでね(笑)。」

「えっ?

 マジですか!

 そんな大きいの使ってたんですか?

 第一、それじゃ、携帯できないですよね(笑)。」

「もう、かれこれ40年も前の話だからねぇ。

 重さも1kgもあったしね。

 なので、誰もが持つなんてことは、まだできなくて…。」

「でも、先生は持ってたんですか?」

「あ、いやいや、

 一回だけ、修学旅行の引率で、

 旅行会社の人に借りて使っただけなんだけど…。」

「へぇー。」

「でも、当時はそれでも、とても感動したけどね(笑)。

 だって、持ってれば、どこからでも電話できるんだから。」

「ふーん。」

「でも、最初は、それこそ、電話機能だけだったんだけどね。

 そのうちに、メールが送れるようになったり、

 写真も撮れるようになったり…、ね。

 で、いつからだったかなぁ、

 インターネットに繋がるようになったのは…。」

「なんか、歴史があるんですねぇ。」

「だねぇ。

 で、携帯でインターネットやいろいろできるようになった時に思ったんだ。

 これは、人生の小窓を手に入れたなぁ、って。」

「人生の小窓?」

「うん、そう。

 ほら、Windowsってあるでしょ。

 だから、携帯の小さな液晶画面が、

 ちょうど、小窓なんだってね。」

「なるほど。」

「で、その小窓から、外の世界っていうか、

 世界のいろんなことを見たり、聞いたり、

 そして、調べたりすることができるでしょ?」

「ええ。」

「だから、それまでよりも、

 なんか、人生が急に開けたというか、

 豊かになったような…、ね。」

「それで人生の小窓ですか…。

 なんか、素敵な言い方ですね。」

「でも、まあ、今となっては、それも錯覚だったんだろうけど…。」

「え?錯覚?

 それって、どういうことですか?」

「え?

 あ、うん。

 ほら、いろいろと弊害もあるでしょ、スマホって。」

「依存とかですか?」

「そうだね。

 まあ、ゲームなんかもそうだろうけど…。

 なんか、振り回されちゃうというか…。

 コントロールする側でなく、

 コントロールされる側に、知らず知らずのうちになってたり、ね。」

「なるほど。」

「小窓から、外の世界を見てたつもりが、

 逆に、小窓を通して、外から何でも覗き見されてたりね。」

「なんか、そう考えると、怖いですね。」

「そうだね。」

「でも、私はそんなに振り回されてはないと、思いますけど…。」

「なら、いいけど。

 でも、確かに検索機能は便利だよね。」

「そうですか?」

「だって、言葉の意味はもちろん、

 世界中のニュースが、リアルタイムで見ることができるでしょ?」

「そうですね。」

「私が、陽香さんの年齢の頃は、

 いわゆる辞書しかなかったからねぇ。

 国語辞典とか、英和辞典とかね。」

「ああ、そういうの、学校で買うように勧められるけど…、

 ほとんど使わないですよね。

 スマホがあれば、何でも調べられるから。」

「でしょう?

 だから、何でも調べるのに使うなら、とっても便利ってことだよ。」

「でも、もう、それが当たり前だから、

 あんまり便利って、感じないですね。」

「だろうね。

 でも、便利はいいんだけど、

 時々、デマというか…、

 間違った情報も溢れてるから、

 気を付けないといけないんだけど、ね。」

「デマですか?」

「そう、デマね。」

 

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