創作読物 16「心の成長の度合い」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「でも、誤解って、ほうぼうに転がってるっていうか、

 人のいる所、誤解あり!みたいなところってありますよね(笑)。」

「確かに、そう言われてみると、そうかもしれないですね。

 今まで、あまりそんなふうに考えたこともありませんでしたけど…。」

「なので、話は変わりますけど、

 例の、学校って、絶対なのかどうかってこともね。」

「ああ…。

 私、先生にそう聞かれた時、

 正直、なんでそんなこと聞くんだろ?って、

 その時は思ったんですけど…、

 でも、いろいろとこうしてお話してると、

 なんか、別の見方もあるのかなぁ、とか…、

 いや、私って、もしかしたら誤解してるのかなぁ、なんて。

 学校に対して。」

「いや、それはわかりませんけどね…。

 ただ、今日はちょっとこれを見てほしいんですけど…。」

 

 

「何ですか?これは。」

「何だと思います?」

「えーっ!

 成長レベルってありますから、

 なんか、身長とか体重のグラフですか?

 でも、24歳過ぎてもずっと伸びてるから…、違うか。」

「うん。

 成長は成長でも、これ身体のほうじゃなくて、

 心、メンタルのほうなんですよ。」

「ほう。」

「これ、以前、私が大学でライフデザインという科目を教えていた時に、

 学生にいろいろと考えてほしくてやったんですけど…。」

「はい。」

「大学生っていうと、大体20歳前後ですよね。」

「ええ。」

「その学生たちにね、

 自分のこれまでの人生を、だいたい物心ついた4歳ぐらいから

 これまでを振り返ってみて…、

 それから、今後のことについては、40代半ばまでぐらい、

 なのでこれは、あくまでも想像で、ということになりますが、

 とにかく、心の成長の度合いを自分なりに考えて、

 とりあえず4歳から10年刻みで、直線でグラフ化してみてよ、

 とやってもらったんですよ。」

「へえー。

 面白い授業ですねぇ。」

「ええ。

 なんか、学生たちは熱心にやってましたよ、人と見比べたりしながら(笑)。

 なのでこれ、客観的なデータというよりは、主観的というか…、

 でも、主観と主観の積み重ねって、より客観性を帯びるのでね。」

「そ、そうなんですか?ちょっと私にはよくわかりませんが…。」

「あ、すいません。

 ともかくも、成長の度合いですから、

 できれば、右肩上がりというか…、

 これで言うと、この黒い直線になるのが理想かもしれないんですが…。

 でもね、学生たちの結果をまとめてみると、

 この、一番下の緑の線が混じってる、これですね。

 こういう結果になったんですよ。」

「へえー、そうなんですか。

 じゃ、この赤い線は何なんですか?」

「ええ。

 これはね、14歳から急に跳ね上がってますでしょ?」

「はい。」

「これはね、学生たちにはもちろん名前は出さなかったんですけど、

 何人か、芸術志向の学生が居たんですよね、音楽とか、美術系で。

 しかも、すでにいろんな賞を取ってるような学生が少し混じってまして、

 そうした学生たちは、14歳、つまり中学生ぐらいから、

 自分は急に成長したとね、メンタル面が。

 そういう自覚というか、自己分析なんですよ。」

「なるほど。

 なんか、一芸に秀でてる人って、そんな感じなんですかねぇ。」

「うん。

 まあ、なので、この赤い線の学生たちは、まあ、突然変異っていうと

 それこそ誤解を招きそうですけど(笑)、まあ、例外というか…。」

「そうなんですね。」

「で、問題は、本来であれば、黒い線で行ってほしいのに、

 どうして、緑の線のほうが圧倒的に多いのかってことなんですよ。

 どうしてだか、飯塚さんは想像がつきますか?」

「さあー。

 ちょうど14歳からの10年間と、34歳からの10年間で、

 なんというか、伸び悩んでるってことですよね?」

「そうなんですよ。

 その年齢時期の、いわば精神的な成長が伸び悩むというか、

 阻害されてる要因って、何なんでしょうかね、ってことなんです。」

「阻害されてる要因…、うーん。難しいですねぇ…。

 これって、同じ理由ですか?この2つの時期の理由は。」

「いえ、違うと思います。」

「うーん。

 何か、ヒントくれませんか?」

「ヒントですかぁ?

 そうですね、じゃあ、14歳って、日本では何年生?」

「14歳は、ちょうど中学2年生ですかね。」

「ええ、そうですね。それが考えるヒントです。」

「え?」

 

(つづく)

 

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