創作読物 26「親が子どもの好奇心を潰してる」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「さて…、

 わかりませんか?

 今までのやりとりを振り返ってみて…。」

「うーん。」

「そうですね…、

 ヒントとしては…、

 今出た、常識って言葉ね…、これ、怪しい言葉ですよ。

 なので、常識を疑え!ってのがヒントかな(笑)。」

「常識を疑う?」

「ええ。

 もちろんなんでもかんでも疑え、ということではないですよ。

 ただ、自分や他人が当たり前のように思ってることで、

 今までノーチェックで信じちゃってることって、

 意外に多いと思うんですけど…。」

「ノーチェックで信じてること?」

「そうですね。

 疑え、と言うより、改めてチェックしたほうがいい、

 と言ったほうがいいかもしれませんね…。」

「なるほど。

 そう言われると…、

 案外、多いかも…、ですね。

 なんか、ちょっと偉い人が言ってるから正しいとか、

 多くの人がそう言ってるから、まあ、間違いないんじゃないか…、

 とか…。

 鵜呑みにしちゃってることって、意外に多いかも、ですね。」

「そうそう。

 鵜呑みにするってのは、

 要するに、疑わないとか、頭から信じるとか、妄信するってことだから、

 実は、あまりいい意味ではないでしょう?」

「ああ、確かに…、そうですね。」

「でも、日本人は、何て言うか…、

 先週お話した、同調圧力とか、権威主義っていうのと通ずるんですが…、

 とにかく、国が決めたことだから、とか、

 何かの専門家の言ってることだから、とか、

 何かと上に立つ人とか、その道の権威とかが言ってることについて、

 ほとんど無批判というか、鵜呑みにしてる人って、多くないですか?」

「そう言われてみれば…、そうかもしれませんねぇ。

 ただ、何となく、文句をつけたり、異議を唱えたりって…、

 特に今おっしゃった、偉い人に対しては、そういうのって、

 なんか、できないというか、しにくいというか…。

 そういうほうが、慎み深いというか、礼儀をわきまえてるというか…。」

「うーん。

 それも間違った常識の代表例かもしれないですね。」

「うーん。

 でも、日本では、例えば、子どもが親の言ったこととかに、

 反論したり…、まあ、反論しないまでも、例えば、それってなぜ、なぜ?

 って、聞くと、しつこい!とか言われて怒られたりしますよね?」

「そうやって育てられたり…、

 そして、そうやって育てられた人が親になると、

 今度は自分の子どもを、またそうやって育てたり…。」

「ああ、確かに。

 そう言われると、私にも当てはまるところがありますねぇ。」

「いわば、負のループってやつですね。悪循環、ね…。

 でもね、じゃあ、飯塚さんが親になぜって聞いたのは、

 それこそ疑問に思ったり、聞きたいから聞いたんでしょ?」

「ええ、そうですね。」

「それを、例えば、うるさいとか、煙たがられたら、

 その時、どう思いました?どう感じました?」

「そりゃ、もちろん、いい気持ちはしなかったですよねぇ、おそらく。

 もう、忘れちゃったけど。」

「当然ですよね…。

 つまり、それって、親が子どもの好奇心を潰してるっていうか、

 子どもの可能性とか、能力とか…、伸びる芽を摘んでるっていうか…。」

「なるほど。

 そう考えると、なんか、怖いですねぇ。

 親が子どもの成長を妨げてるって、いうか…。」

「そうですね。

 親が自分なりの常識とか、価値観でもってやってることが、

 ほんとに子どものためになってるのか、っていうとちょっと怪しいというか。」

「正しいと思ってやってるから、余計、何て言うか、始末が悪いというか…。」

「確かに。

 でも、こういうのって、親だけ、つまり家庭内だけでなくて、

 学校でもそういう面があるんで、厄介というか、困ったもんなんですよ。」

「あ…、

 先生、ようやくわかりました。

 先生が私に振り子を使ったってことが。」

「ようやくわかりましたか(笑)。」

「はい(笑)。

 私が学校は絶対、って思ってたことに対して…、ですね?」

「え?

 思ってたってことは、今はもう思ってない、ってことですか?(笑)。」

「ああ、またまた突っ込みが厳しい!(笑)。」

「ははは。

 飯塚さん、話が突然変わるようですけど…、

 今、世界で、いわゆる先進的な教育が行われてる国って、

 どこだかわかりますか?」

「ええ?

 どこだろ…。

 やっぱり、アメリカとかですか?」

「ブブー!

 アメリカは、とにかく国が大きいので、一概には言えないかも、ですが、

 むしろ、教育後進国って言ったほうがいいかもしれないですよ。」

「え?

 そうなんですか?」

「ええ。

 まあ、これはまた、いつかお話してもいいんですけど…。

 アメリカ以外で、どこだと思います?」

「あ、そう言えば…、

 以前、テレビで…、

 オランダの学校のことをやってたような…。」

「そうですか。

 オランダとかもなかなかいい線行ってますが…、

 いわゆる北欧ね…。

 中でもフィンランドは、よく話題にされますね、今世紀に入ってから。」

「へぇー。

 フィンランドですかぁ。

 なんか、オーロラでしか、印象がないですけど(笑)。」

「そうですよね。

 日本からしたら、遠い国ですよね。」

「で、どんな点が進んでるんですか?フィンランドの教育って。」

 

(つづく)

 

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