創作読物50「どこかで、誰かが、何かを企んでる」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「でも、

 なんで、デマって拡がっちゃうんですかね?」

「うーん。

 そうだねぇ。

 デマを流す側と、デマを受け入れるというか、

 信じちゃう側の、両方の問題があると思うんだけど…。」

「デマを流す側は、なんで流すんですか?」

「うん。

 それも二つあって…、

 単純に、自分が耳にした噂話を、

 こうなんだってよ、これこれこうらしいよ、

 って他の人に流す場合と…。」

「ええ。」

「もう一つは、

 ある意図をもって、わざとデマを流す場合ね。

 当然、こっちのほうが悪質だけどね。」

「え?

 わざと流すんですか?」

「うん。

 まあ、単なる噂話か、それとも悪意あるものなのか、

 ってのは、境目が難しいかもしれないんだけど…、

 たとえば、さっきのトイレットペーパーの時も、

 広告を出したスーパーマーケットは、

 原油がなくなれば、紙も不足するだろうから、

 そういうふうに広告に書けば、トイレットペーパーが売れて、

 儲かるだろうと思ったんだろうね、きっと。」

「つまり、意図的ってことですか?」

「たぶんね。」

「でも、それを信じちゃう人がいるってことですよね?」

「そうだね。」

「それって、なんでなんですか?」

「うん。

 結局は、一人ひとりの想像力の問題かもしれないんだけどね。」

「想像力…、ですか?」

「うん。

 つまり、ある情報をつかんだ時に、

 それを悲観的に捉える人と、楽観的に捉える人がいるんだよね。」

「性格ってことですか?」

「そうだね。

 そうとも言えるかな。」

「でも…、

 それだけじゃないような気も…。」

「そう?」

「ええ…。

 なんか、自分にとって都合がいいように解釈するってこともあるのかなと。」

「ああ、なるほどね。

 それも、もちろん、そういうのも含めて、性格って言えるんだろうね。

 恣意的って言うんだろうけど…、

 つまり、勝手気ままというか、自分勝手な解釈だから、

 傍から見たら、ほとんど論理的じゃないんだけどね…。

 たとえば…、そうだな。

 陽香さんは、風が吹けば桶屋が儲かるって、知ってる?」

「桶屋?

 何ですか?それ。」

「強い風が吹けば、巡り巡って桶が売れて、桶屋が儲かるってことなんだけど…。」

「え?

 なんでなんですか?」

「うん。

 これ、笑っちゃんうんだけど…。

 つまり、強い風が吹くと、土ぼこりが立って、

 それが目に入って、視力を失う人がたくさん出る。

 そうすると、そういう人たちは三味線弾きになるから、

 三味線が売れる。」

「え?

 よくわからないんですけど…。」

「そうでしょ(笑)。

 昔は、三味線弾きは、眼の不自由な人の代表的な仕事だったんだよ。」

「ああ、なるほど。

 そういうことですか。」

「で、三味線は、猫の皮で作るから、

 三味線が売れるってことは、猫の数が減る。

 そして、猫が減れば、ネズミが増えるでしょう?」

「ええ、まあ。」

「で、ネズミが増えると、

 そのネズミが桶をかじるので…。」

「え?

 ネズミは桶をかじるんですか?」

「うーん。

 今は、そんなの見たことないから、わからないよね(笑)。」

「ええ(笑)。」

「まあ、でも、結果、桶の修理とか、新しく買うとかで、

 桶屋が儲かるってことなんだよ(笑)。」

「なんですか、それ?

 関係ないじゃないですか(笑)。」

「関係ないよねぇ、全然説得力ないし(笑)。

 でも、誰が流したのか、わからないけど、

 これも、誰かの勝手気ままな解釈というか、

 自分勝手な情報というか、つまり、デマの代表格だよね。」

「でも…、

 よく考えれば、なんか、でたらめな情報ってわかるはずなのに、

 どうして、デマを信じちゃう人が出るんですかねぇ?」

「うん。

 そこだよね、大事なのは。

 どうしてだと思う?陽香さんは。」

「うーん。

 でも、全員が信じちゃうわけじゃないんですもんねぇ…。

 うーん、どうしてなんだろ…。」

「単純には、デマを信じる人と、信じない人の二つに分かれるでしょ?」

「ええ。」

「で、信じちゃう人は…、

 たとえば、トイレットペーパーを買いに行くよね。」

「ええ。」

「で、そういうニュースが流れると、

 デマを信じてなかった人も、自分もトイレットペーパーを買っとかないと、

 そのうちに買えなくなっちゃう、って思って…。」

「なるほど。

 それで、ますますトイレットペーパーがなくなっちゃうってことですか?」

「そうそう。

 で、デマがホントになっちゃうんだよね。

 これが、デマの恐ろしいところなんだけど…、

 問題は、このサイクルというか、負の連鎖を悪用しようとする人たちが…。」

「いるってことですか?」

「そうだね。

 だから、なんか…、

 何かの流れが一気にある方向に向かってる時には、

 どこかで、誰かが、何かを企んでる可能性があるってことを、

 頭の片隅で、意識しておいたほうが、いいってことなんだろうね。」

 

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