創作読物55「ダークサイドも知ることが大切」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「歴史は勝者がつくったもの、って言うのはね…、

 たとえば、戦争なんかで話すと、

 その歴史を書くのは、当然、戦争に勝った側でしょ?」

「でしょうね。」

「すると、敗けた側は悪者に仕立てられて書かれるとか、

 そもそも、存在そのものがなかったものにされるちゃうとか…。」

「そっかぁ…。」

「だから、まあ、真偽のほどは別として、

 我々が知らされている歴史は、決して正しいわけじゃないってことだね。」

「それも、改竄ていうことですか?」

「うん。

 当初は、自分たちに都合の良いように書き換える、

 っていう意図があったんだろうから、まあ、改竄なんだろうね。」

「ええ。」

「でも…、

 嘘も100回言えば真実になる、っていう言葉があるように、

 歴史も、人々が口々に伝えているうちに、

 文字どおり、嘘もホントになっちゃうんだろね。

 だから、まさしく、勝てば官軍、負ければ賊軍なんだよね。」

「でも、そういうのって…、

 なんか、嫌ですね。

 とにかく、勝てばいいんだって感じで…。」

「そうだねぇ。

 そういうふうだと、勝つためなら手段を選ばないってなるしね。

 どんな不正を働いても、勝とうとするでしょ?」

「ですね。

 でも、勝ち組が出れば、結局、負け組も出ちゃうってことですからね。」

「そうだね。

 でも、この世では強い者が正義、っていうのは、

 なかなか変わらないというか…、廃れないね。」

「もし、そういう考えがなくなれば、

 もっと、生きやすい世の中になるんだと思いますけど…。」

「うん。

 でも、なんか、人類って…、

 結局は、あんまり賢い生き物じゃないのかもしれないね。」

「うん。

 そうかもしれないですねぇ…、

 なんか、悲しいけど…。」

「うん。

 ところで、陽香さんは、

 フォースとともにあらんことを、って知ってる?」

「あ、ええ。

 スターウォーズですね。好きで、シリーズで観てますよ。」

「うん、そう。

 あの、フォースって、単純には、いい力、パワーって感じだけど、

 暗黒面もあるって、ね。」

「そうですね。

 フォースの暗黒面とか、

 ダークサイドって、映画の中でよく出てきますね。」

「うん。

 あのジェダイ・マスターのヨーダも、

 弟子のルークに、恐れ、怒り、攻撃的な心がダークサイドだと、

 教えているよね。」

「あ、それは、かなり古い映画ですね。」

「あ、そうそう(笑)。

 旧三部作ね。

 で、ヨーダは、その恐れとか怒りは、

 すべて、人間の内面に現れるもので、

 大事なものを失うことへの恐れとか、

 思いどおりにならないことへの怒りなど、

 その2つの感情に支配されてしまうと、

 攻撃的な心へと変貌して行ってしまう、とね。」

「ダークパワーってことですね。」

「そうだね。

 だから、ヨーダは、

 フォースを学び、身につけるには、

 そのフォースの暗黒面であるダークサイドも知ることが大切だって、ね。」

 ここんとこ、大事ね(笑)。」

「それって、

 自分の弱さとか、マイナス面も、知っておかないと駄目ってことですね。」

「おっしゃるとおり(笑)。

 だから、私は、カチカチ山の内容を変えたりしちゃいけないって思うんだよね。

 子どもと言うか…、我々人間には、優しさだけじゃなく、

 残酷な面も当然あるんだということを、

 小さい頃から、知って育ったほうがいいんじゃないかなって、ね。」

「私も、そう思います。」

「うん。

 その上で、どうしたら、そのダークサイドに陥らないで済むかっていう、

 その方法とかについて、みんなで考えるとか、意見交換するとかね…、

 そういうのを、子どもの頃からしたほうが、よっぽどいいと思わない?」

「それって、いいですね。」

「うん。

 でないと、私みたいに、純粋培養されちゃうと、

 碌なことはないからねぇ。」

「え?」

「あ、まあ、それは冗談だけど…。

 でも、何て言うか…、

 子どもの頃から、ある程度の免疫はつけておいたほうが、ね。」

「免疫ですか?」

「うん。

 自分の中には、正しい面だけでなく、

 汚いというか、見苦しい面もあるんだってことを、

 小さい頃から知って…、

 まあ、でも、あとは、結局は本人次第なんだろうけどもね。」

「暗黒面に支配されちゃうかどうかってことがですか?」

「うん、そうだね。

 でもね…、

 仮に暗黒面に陥ってしまったからといって、

 そっち一辺倒になってしまうっていうことでもないと思うんだよね。」

「どういうことですか?」

「うん。

 また、時代劇持ち出して、悪いんだけど…(笑)。」

「あ、はい。

 どうぞ、どうぞ(笑)。」

「池波正太郎の鬼平犯科帳ってのがあってね。」

「あ、それも観たことないですけど…、

 確か、長谷川平蔵でしたっけ?」

「ああ、知ってるじゃん(笑)。

 ほんとは時代劇の隠れファンなんじゃないの?」

「いやいや。

 違います、違います。」

「そう?

 ま、いっか。

 で、その火付け盗賊改め方長官、長谷川平蔵。

 人呼んで、鬼の平蔵がね。」

「ええ。」

「この鬼平犯科帳はね、

 ストーリーが、全然、勧善懲悪じゃないんだよね。」

「そうなんですか?

 でも、なんか、火付け盗賊改めって言うと、

 悪者を懲らしめるって感じですけどね。」

「もちろん、残虐な悪党には、

 鬼平も、まさしく鬼となって懲らしめるんだけど…、

 鬼平自体、若い頃は悪党というか、

 札付きのワルでもあったんでね。」

「え?

 そうなんですか?」

「うん。

 で、私が一番好きというか、

 気に入ってるセリフがね…、

 よく鬼平が口にするんだけど、

 人は悪いことをしながら、善いことをし、

 善いことをしながら、悪いことをする、ってね。」

「ふーん。

 なるほど。」

「なかなか、味があるというか…、

 核心を突いてない?」

「そうですね。

 つまり、いつ、どっちに転ぶかわからないってことですね。」

「うん。

 で、これって、真実だと思わない?」

「はい、

 なんか、説得力ありますね。」

 

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