創作読物85「人はどうして暴力振るうんですか?」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

 ピィンポーン~、ピィンポーン~

 

「あ、はい。

 ちょっとお待ちください。

 今、開けますんで…。

 あれ?陽香さん?

 どうしたの?こんな時間に。

 予約は…、確か、明日の4時だったよね?」

「はあ、はあはあ…、

 あ、はい。はあ…、

 すいません。突然来ちゃって。」

「あ、いや、それはいいんだけど…、

 走ってきたの?

 なんか、顔色が青いね。大丈夫?」

「…、ええ、

 駅から走ってきちゃいました…。」

「そう。

 2キロぐらいあったんじゃない?」

「はあ、はあ…、

 そうですね…。」

「まあ、あがってお水でも飲めば?」

「あ、はい。

 ありがとうございます。

 じゃあ、失礼します。」

「はい、どうぞ。

 冷たい水。」

「ありがとうございます。

 いただきます。」

「一気飲みだね(笑)。

 少しは落ち着いた?」

「あ、はい。

 おいしかったです(笑)。」

「お母さんは知ってるの?」

「先生の所に来たことですか?」

「うん。」

「いや、黙って来ちゃいました。」

「そうか…。

 何て言って出てきたの?」

「ちょっと散歩してくるって…。」

「あ、そうだ。

 あの日の翌日から、散歩してるんだってね。」

「え?

 なんで知ってるんですか?」

「おっと、いけね…(笑)。

 いや、お母さんから電話があってね…。」

「そうですか…。

 あれから、毎朝してます。」

「へぇー。

 続いてるんだ。3日お嬢さんじゃなかったね(笑)。」

「なんですか?それ?」

「いやいや。

 じゃあ、今日は2回目の散歩?」

「あ、そうですね(笑)。」

「お母さん、不思議がらなかった?」

「いや、特には…。」

「そう。

 で、どうしたのかな?

 散歩が目的でなく、ここに来るのが目的だったんでしょ?」

「あ、ええ。

 先生、人はどうして暴力振るうんですか?」

「え?

 それはまた、突然、難しい質問だね…。

 何かあったのかな?」

「あ、すいません。

 いきなりの質問で…。

 実は、今朝、いつものコースを散歩してたら…、

 あ、今朝はちょっと寝坊しちゃって…。

 いつもよりは遅い時間に家を出たんですが…、

 幼稚園だか、保育園の送り迎えって言うんですか?

 パパさんが、4歳ぐらいの男の子を叱ってて…、

 で、男の子が余計にウォン、ウォン泣きだしたら、

 そのパパさんが、いきなりその子を殴って…、

 それが、一回だけでなく、何回も…。」

「で、どうしたの?」

「私ですか?

 私は、ちょっと固まっちゃって…。

 そのあと急に怖くなって、その場を走って逃げちゃったんです。」

「そうなんだ。

 そりゃ、びっくりするというか…、

 その場には居たたまれなくなるねぇ。」

「なんか、その男の子には、悪い気が後でしたんですけど…、

 ちょっと、怖くて怖くて…。」

「陽香さんは、そういう光景は初めて見たの?」

「え?

 あ、いや、

 人が人を殴ってるのは、見たことはありますけど、

 あんな小さい子を、親が殴るなんて、

 ドラマの中でしか見たことはないです。」

「そっか。

 なら、ビビっちゃうよね。」

「ほんと、ビビりました。」

「で、人はどうして暴力振るうんですか?って聞いたわけ?」

「あ、はい。

 いや、実は、今朝のことだけじゃなくて、

 一昨日、テレビ見てたら、アメリカの警察官が、

 黒人の男の人を、無抵抗なのに、首を踏んづけて…、

 結局、その黒人の人が病院で死んじゃった、っていうニュース見て…。」

「ああ、あのニュースね。」

「あれも、暴力ですよね?

 警察官だって、何してもいいってわけじゃないでしょ?」

「そうだね。

 しかも、あれは人種差別的な問題が絡んでるからね。」

「人種差別ですかぁ。

 それは、私にはよくわかんないですけど…。」

「うん。

 でも、人が人を差別することと、

 人が人に暴力を振るうことは、

 根っ子では繋がってると思うよ。」

「それって、どういうことですか?」

 

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