創作読物104「わかっちゃいるけど、やめられない」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「さて、

 では2番目に多かった後悔、

 あんなに働き過ぎなければよかった、ってことなんだけど…。」

「その本を書いたのは、確か…、

 えーと、オーストラリアの人でしたよね?」

「うん、そうだよ。

 これ、日本人のセリフなら、ピンと来るんだけど、

 と、思った?」

「ええ、

 日本人は、よく働き過ぎだって、言われてますからねぇ。」

「うん。

 だから、もしかしたら、

 日本人にアンケート取ったら、

 これが後悔のナンバー1になるのかもね。」

「オーストラリア人も、

 働き過ぎの人が多いんですかね?」

「それはよくわからないけど…、

 でも、何と言うか…、

 働き過ぎということでなくて、

 普通に働いていても、死ぬ間際には、

 多くの人が、働き過ぎたなぁ、と後悔するってことなんじゃないかな。」

「確かに、

 働くというのは、ほぼ毎日のことだし、

 そう考えると、生きている間の大部分の時間を使うというか、

 割いてるってことですからね。

 私は、まだ働いてないので、実感はないですけど。」

「ほんとにね。

 働くことは、大事だし、

 価値あることではあるけれど、

 気を付けないと、中毒と言うか…、

 次第に感覚が麻痺してくることが、よくあるからねぇ。」

「そうなんですか?」

「陽香さんは、

 ワーカホリックって知ってる?」

「ああ、

 聞いたことはありますけど…。」

「仕事中毒とか、訳すけどね。

 そういう人は、自分では薄々気づいても居るんだろうけど、

 なかなか認めないと言うか…。

 なので、なかなか改善と言うか…、改めることが難しいんだけど…。」

「何か、基準のようなものはあるんですか?」

「ワーカホリックか、そうじゃないかの?」

「ええ。」

「ものさし的には…、

 たとえば、休日に何をしていいかわからない、とか、

 休みの日も、何かと仕事のことを考えちゃう、とか、

 もちろん、仕事を家に持ち帰るってことが当たり前になってる、とか…。」

「そういうことなら、

 自分でも、ワーカホリックかそうじゃないかは、わかりますよね?」

「たぶんね。

 働き過ぎだなぁ、って思う人の大部分は、

 既にワーカホリックか、その予備軍なんだろうねぇ。」

「でも、

 なんで、自分では認めないんですか?」

「うん。

 認めないというより、

 認めたくない、のかな。」

「認めたくない?」

「ワーカホリックの人の、もう1つの特徴として、

 自分は、会社や上司から、高く評価されてる、

 っていう思いがあるんだよね。

 なので、その自分がワーカホリックであると、認めちゃうと…。」

「なるほど。

 仕事で、つまずいちゃうって感じるんですね。

 でも、それだと、何と言うか…、

 悪循環と言うか…、泥沼と言うか…。」

「だね。

 改善方法と言ったって、

 休みの日は、仕事のことは考えない、って言われたってねぇ…。」

「するなって、言われると、

 却ってしたくなっちゃいますもんね(笑)。」

「だよね(笑)。

 あとは、仕事以外に熱中できるものを見つけな、

 と言われてもねぇ…。」

「仕事に熱中してるわけですからねぇ。

 きっと、仕事が面白くて仕方がないんですよね?」

「うん。

 そういう人も居るだろうけど、

 必ずしも、そうでもなくて、

 謂わば、わかっちゃいるけど、やめられない、

 ってことなんじゃないかな。」

「でも、

 だとしたら、

 やはり、死ぬ間際に、働き過ぎたことを後悔するってのは、

 納得と言うか…、

 やはり、そうなっちゃうんだろうなって、思いますね。」

「ワークライフバランスなんて、言うけど、

 掛け声だけで、一向にバランスは図れてないもんね。」

「スローガンとしては、いいんでしょうけど、

 具体的な方法とかがないと、進まないですね。」

「いろいろな会社や組織が、

 対策は考えているんだろうけど、

 結局は、個人個人が思い知るというか、

 身に沁みないとダメなんじゃないかな。」

「個人個人がですかぁ…。

 先生は、どうなんですか?」

「私かぁ…。

 私も、ワーカホリックだったかなぁ。」

「過去形ってことですか?」

「ああ(笑)。

 そうだね。

 以前は、確実にワーカホリックだったね(笑)。」

「何かのきっかけで、変わったということですか?」

「そうだね。」

 

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