創作読物107「クリスマスをわが家で」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「どんな仕事であれ、
働くことで給料を得たり、
あるいは、その労働の対価としての報酬を得てる人は、
職業人、つまりプロフェッショナルなんだから、
真剣に仕事に取り組むというのは、当たり前のことなんだよね。」
「そうですね。」
「仕事に対するいい加減さや、
自分に対する甘えは、許されないでしょう?」
「働くって、
厳しいことなんですね。」
「うん。
でもね、その真剣さが高じると、
時に、難しい仕事を担当したり、
いろいろな壁に突き当たり、
しかも、孤立無援状態に陥っちゃったりすると、
必要以上に深刻に物事を捉えてしまい、
結果的に心身を害してしまう、という事態に陥りかねないんだよね。」
「先生の場合が、そうだったんですね。」
「うん、そうだね。
どう対処したらよいのかわからない、
でも、自分だけでこなさなければいけないと、
何でもかんでも自分ひとりで責任を負おうと、
自分で自分を追い込むうちに、
知らず知らず「真剣」さは「深刻」さに変わっていってしまうんだね。」
「そういう時は、
どう対処したらいいんですか?」
「陽香さんは、どう思う?」
「うーん。
私はまだ働いたことがないから…、
生意気なことを言っちゃうかも、ですけど、
やはり、一緒に仕事をできる仲間というか…、
相談相手でもいいんでしょうけど、
とにかく、一人相撲になっちゃいけないんじゃないかなと、思います。」
「一人相撲か…、
なるほどね(笑)。
確かにあの時は、一人で相撲を取ろうとしてたのかもしれないな。
陽香さんね。」
「あ、はい。」
「仕事はチームでするものなんだよ。
もちろん担当は決まっていても、
担当は仲間を巻き込み、知恵を出し合って事に対処しなきゃいけない。
一方、周りの先輩・同僚たちは、仕事を担当にだけ任せたり、
まる投げしたりするのではなく、常に目配り気配りをし、
必要なアドバイスを行なうことが大切なんだよね。」
「そういう職場というか、
そんなふうに仕事ができたら、楽しいでしょうね。」
「だね。
でも、もちろん、仲良しごっことは違うんだよ。」
「ええ。
仕事は真剣に、ですもんね。」
「そうそう。
だからこそ、皆が気持ちよく、ストレスをあまり感じずに、
仕事に真剣に打ち込むことができる環境は、自分たちで創るんだ、
という意識が大事なんだと思うね。
これは、管理職だからとか、平社員だから、と言うのではなく、
誰もがいい職場を創って、いい仕事をする、という気にならないとね。」
「仕事は真剣に。
しかし深刻になってはならない。
とっても大事な言葉を聞けた気がします。」
「そっか。
ならよかった(笑)。」
「でも、先生はすぐに仕事に復帰できたんですか?その時。」
「まあ、
できなくはなかったんだけど…、
だいぶ疲れていたんでね。
お医者さんも、2、3日入院して、療養していきますか?
と聞いてくれたので、結局、そのままちょっと入院したんだよ。」
「そうですか。
気分転換も必要ですからね。」
「そうだね。
その時は、リフレッシュが必要だったんだろうね。」
「思い切って休むって、
必要なことなんだって、
今の私にも、よくわかりますよ(笑)。」
「そっかぁ(笑)。
ただ、ちょうどその時は、
年末のクリスマスの時期だったんだよね。」
「え?
そうなんですか…。
じゃあ、その年のクリスマスは、病院で迎えたんですね。」
「うん。
だから、普通はあまり体験できないクリスマスだったかな。」
「え?
どういうことですか?」
「病院だから、
クリスマス・イブの夜に、
看護師さんたちが、病室ごとに回って来て、
ろうそくに火を灯して、クリスマスキャロルを歌ってくれたんだよ。」
「へー。
なんか、素敵ですね。」
「うん。
そうだ、陽香さんは、クリスマスをわが家で、って歌、知ってる?」
「いえ、
知らないです。」
「その時に歌ってくれた歌の1つなんだけど…。
歌詞とメロディがとても良くてね。気に入っちゃったんだ。」
「じゃあ、今、ここで歌ってくださいよ。」
「あ、
いやいや、歌うのは勘弁だけど、
歌詞なら、教えてあげられるよ。」
「ええ。
知りたいです、お願いします。」
「えーとね…、
I’ll be home for Christmas
You can plan on me
Please have snow and mistletoe
And presents by the tree
Christmas eve will find me
Where the love light gleams
I’ll be home for Christmas
If only in my dreams
て、言うんだけど、どう?」
「なんとなくは、わかりますけど…。
訳してくれます?」
「うん。
I’ll be home for Christmas
クリスマスには帰るよ。
You can plan on me
だから待ってておくれ。
Please have snow and mistletoe
真っ白な雪とやどりぎを揃えて、
And presents by the tree
そしてプレゼントはツリーにね。
Christmas eve will find me
イブには君と逢えるだろう。
Where the love light gleams
愛の光、輝く場所でね。
I’ll be home for Christmas
クリスマスには帰るよ。
If only in my dreams
もしそれが、夢だったとしてもね。」
「へぇ…、
素敵な歌詞ですね。」
「これは、
第二次世界大戦中に、戦地に駆り出されて、
クリスマスをわが家で過ごせない兵士たちに、
とっても多くリクエストされた歌らしいんだけど、
別に戦争でなくても、仕事やいろんな事情で、
クリスマスをわが家で過ごせない人は、たくさんいるからね、今年も。」
「そうですね。」
「メロディも、とってもいいから、
家に帰ったら聞いてみて!」
「はい、必ず(笑)。」
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
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