シンガポール事情:兵役編その6

 

入隊から約2週間、私は初めての体力テスト:

IPPT(individual physical proficiency test) に合格するために、

来る日も来る日も地獄のトレーニングを重ねました。

まずは腕立て伏せ。

1分間に40回以上できないといけないのですが、

腕をきちんと90度に曲げることができないと、ノーカウントとなってしまうのです。

私は最初、ノーカウントが何回もあり、15回しかできませんでした。

次に、腹筋も1分間に40回以上できないといけないのですが、

私は10回しかできませんでした。

そして、ランニングは、2.4キロを11分で走らないと合格できないのですが、

私は、なんと15分といった悲しい結果に泣きました。

 

毎日、毎日、腕立てと腹筋とランニングの繰り返し・・・、

身体は筋肉痛でボロボロになったのですが、

気持ちは、意外にへこたれませんでした。

IPPTの厳しさを知り、最初の結果を見て、次のテストで絶対受かりたい

という気持ちが強くなったのです。

自分の身体が鍛えられて、強くなっている、ということが実感できたからです。

 

それ以後、2か月間は、IPPTに受かるためのトレーニングに励みました。

炎天下の下、グラウンド(400m)を30分以上走ったり、腕立て伏せと腹筋も

コンクリートの上で、手が焼けるのを我慢しながら行いました。

最初は体が強い刺激の運動になれなかったのですが、時が経ち、

段々と自分の細い体が分厚く変わっていくのを実感することが出来ました。

運動をすればするほど、身体が強くなることを知り、

運動をすることが好きになりました。 

 

そしていよいよ迎えた第2回目のIPPTテスト。

今回のテストで落ちれば、また一からやり直し、

受かれば、射撃訓練に進むことができるので、

心臓が爆発するぐらい緊張し、絶対に受かってみせるとの思いで受けました。 

 

まず、腕立て伏せは、自分でも55回カウントすることができ、

我ながら、幸先の良いスタートを切ることができました。

 

続く腹筋でも、47回をクリアし、いよいよ最後のランニングに臨みました。

しかし、ランニングのタイムは、自分では測れなかったので、

結果は、翌日の発表を待つしかありませんでした。

 

そして迎えた結果発表、

兵士が4D番号が読み上げ、「2302」の番号が呼ばれ、

私はみごとIPPTテストに合格できたのです。

受かった新兵は、自分を含め、70%ぐらいでした。

残りの30%の新兵は、改めて基礎体力トレーニングから

出直すことになりました。

思えば、一緒にTekong島にやって来て、

共に頑張ってきたのですが、

ここで初めて、進路に違いが出てしまったのです・・・。

 

私は、ようやく一つ目のハードルを乗り越えることができ、安心しました。

そしていよいよ、次は軍隊生活で一番やってみたかった射撃訓練の始まりです。

                            (つづく)