シンガポール事情:兵役編その8

 

射撃訓練を終えると、今度は野外演習が待っていました。

新兵たちの間では、野外演習の事を英語でout(外)-field(原野)と

呼んでいますが、一番みんなが嫌がっていた訓練です。

その理由を説明すると、施設内トレーニングとは違い、

実際のバトルフィールドに置かれることを想定した訓練となり、

ミスなどが絶対許されないトレーニングだからです。

シンガポール軍の野外演習はまるまる7日間、照り付ける太陽の下、

泥まみれになり、兵士に怒鳴られながら訓練をします。

 

訓練内容は、まずは殻削り。

これは、敵に見つけられないように、身を隠すスペースを作るために

地面を掘る作業です。

また、殻削りは、寝床を作る訓練でもあります。

殻を削るのがうまい兵士はすっぽり体が入り、寝やすい眠り場でしたが、

未完成だったり、上手に掘れていない人は、土の上で寝てるのと同様で、

これでは敵のターゲットになってしまいます。

掘るのが下手な新兵は、へとへとになって寝て、翌朝起きると、

雨水に首まで浸かっていることもありました。

でも、私にとって殻削りは、一番楽で簡単な訓練でした。 

なぜなら、穴を掘るだけという、訓練の中で一番単純な作業だったからです。

早く掘ってしまえば、長く休むこともできたからです。

 

次に、野外でのスポンジを使っての身体の洗い方を教わりましたが、

いつも同じ使い捨ての石鹸を使って体を洗うのですが、石鹸の質が悪く、

体臭が消えないのです。

最初の数日はいいのですが、4、5日後になると身体から悪臭がして、

髪も油だらけで、服装は汚れ、茶色い泥が身体にこびり付き、

一刻も早く風呂を浴びたい状況でした。

他にも体のメンテナンスをしていない新兵がいると、

体臭が強すぎて息を止めざるを得ませんでした。

トレーニングに入って5日目に雨が降り、

その後の太陽光線に当たったことで、私はheat rash(汗疹)という

皮膚が赤く痒くなる症状が背中から腰まで出てしまい、

ものすごく痒くなってしまいました。

 

また、排せつにも苦労しました。

共同便所という名の大きな穴を掘るのですが、

まさしく共同なので、仕切りもなければ、鍵も掛けられないのです。

ウン命共同体なのです。

 

さて、訓練の中で、一番難しく、重要な訓練は、

敵を見つけた時の身の隠し方と攻撃の仕方でした。

敵に見つかる前に、敵を見つけなければいけないのです。

ということは、足音を立てないようにして、

敵の足音や気配を察知しなければいけないのです。

とても神経を使い、訓練後はへとへとになってしまいました。

 

軍隊では野外演習は思った以上に重要で、新兵を「戦える兵士」に

変えるためのトレーニングなのです。

国がいくらドローン兵器やステルス戦闘機などのハイテクな武器を持っていても、

それを使いこなすためには、どんなに危険な事が会っても立ち向かう

兵士の存在が必要不可欠なのです。

野外演習は良い経験ができた訓練だったと思います。

みんな怒鳴られながら生活し、7日目を終えたところで、

やっと地獄の日々が終わったという達成感を感じました。

 

                      (つづく)

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