創作読物 5「一つ家に暮らす家族なのに…」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「私たち親も、もちろん本人も期待していただけに…、

 挫折というか、なんかがっかりしちゃって…。」

「また、不登校になってしまった?」

「ですね。

 ただ、中学校の時よりも悪いというか、とにかく人と接するのが

 怖くなってしまったみたいで…。あまり外出もしなくなってしまって。」

「以前は、外出してたんですか?」

「ええ、夜に近くのコンビニに行く程度ですけど…。」

「今はそれもしなくなっと…。」

「そうですね…。なので、余計心配で…。」

「ご家庭では、自分の部屋にこもるということはないんですか?」

「ええ、それは今のところないんです。

 食事もテレビも居間で私たちと一緒に食べたり、見たりしてます。

 ただ、いつ引きこもりになってしまうか、心配で…。

 とても多いんでしょう?自分の部屋に引きこもってしまう子って。」

「そうですね…。

 で、お母さんは陽香さんにどうなってほしいとお考えですか?」

「どうなってほしい?

 それはやっぱり、ちゃんと学校に行けるようになってくれたら、と

 思っていますよ。」

「そうですか。で、そのあたりのお話は、陽香さんとはしてるんですか?」

「いやあ、できてないですね。

 居間では、楽しそうにテレビ見たりしてるので、機会をうかがって

 話しかけたりしたこともあったんですけど…、

    なんか拒否されたというか、学校の話はしたくないようで…。

    ぷっと部屋に行っちゃうので…。」

「そうですか…。」

「そういう時って、あまり深追いしないほうがいいかなって。」

「そうですね。

 ところで、旦那さんのお名前は何て言うんですか?」

「え?ああ、飯塚陽介って言いますが…。」

「じゃあ、ご自分の名前を一字使ったんですね、娘さんに(笑)。」

「ええ、実はそうなんです(笑)。」

「陽介さんは、陽香さんのこと、どう思っているんですか?」

「いや、それが…、よくわからないんです。

 わからないというか、あまり言わないので…。」

「言わないというのは誰に?」

「私にも、陽香にもです。」

「そうなんですか。」

「なので、何考えてるんだかわからなくて…。

 それもストレスが溜まるんですよね!私。」

「陽香さんのことで、言い合いになったりもするんですか?」

「いや、言い合いというよりも、もっぱら私のほうが言ってますね。

 でも、聞いてるんだか、何か考えてくれてるんだか…、

   ほとんど何も言わないからわからないんですよ。

 このあいだは、陽香のことはママに任せるよ、とか言い出して!

 もう、当てにならないというか、私も頭に来ちゃって!」

「なんか、興奮しちゃいましたね(笑)。」

「あっ、すいません。ついつい思い出しちゃって(笑)。

 なんか、恥ずかしいですね、一つ家に暮らす家族なのに…。」

「いえいえ。あのう、飯塚さん、いろいろと伺ってきたんですが、

    ここでちょっと話を整理してみたいんですけど…。」

「あ、はい。」

「ええとですね、これからのここでの話題なんですが、

 一つにはお母さんのお気持ちやお考えを、もう少し詳しく知りたい。

 なので、それに時間を費やす、というのが一つ。

 もう一つは、お母さんと陽香さんとの関係について、考えていく。

 あともう一つは、ご夫婦のことについてお話をしていく。

 さて、どうしましょう?」

「夫婦のことはいいですよ!」

「そうですか?」

「陽香とのことも、もっといろいろとお互いに話せるようになると

    いいんですけど、先ほど言ったような感じなんで、

    今はなかなか難しいというか…。」

「そうですか。

 どれも大事な話題だとは思うんですけど…。

 でも、今ここには陽香さんも、陽介さんも居ないのでね…。

 じゃあ、とりあえず、お母さんのお気持ちやお考えを、もう少し伺う、

 ということで、よろしいですか?」

「そうですね、お願いします。」

(つづく)

 

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