創作読物 8「学校を居場所に」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「さて、飯塚さん。

 今日は残り時間が…、あと15分ほどになってしまったんですが…。」

「えっ?もうそんなに!

 早いですねぇ、時間が経つのが…、こうしてお話していると…。」

「そうですね…。

 で、残りの時間、どんな話題で意見交換しようか…と。

 今日、ここまでいろいろとやり取りしてきて、

 特に何か感じたこととか、もう少し詳しくお知りになりたいとか、

 これから話題にされたいことなどがあれば…。」

「そうですね…。

 …やはり、学校に行くのは当たり前だと思っていたので…、

 それが、そうじゃない、というか、そう考えない親御さんもいる、

 ってのは、私としては、ちょっとショックというか、意外でしたね。」

「そうですか。

 他には何か、変化というか、お話を始める前と後とで、

 何かご自分の中で、変わったこととかはありますか?」

「変わったということではないんですけど、いいですか?」

「ええ、はい。」

「先生は、定時制の高校の校長先生をなさっていたんですよね?」

「あ、はい。」

「さっき、定時制には不登校経験者が多く入ってくるって、

 おっしゃったかと思うんですけど…。」

「ええ、そうですね。」

「そうした子たちって…、

 ちゃんと学校に行けるようになったのかな?と、

 ちょっと気になったもんで…。」

「なるほど。

 じゃあ、まず、そのあたりのことをお話しましょうか。

 ただ、でも、それを話すと、今日はたぶん時間になってしまうかと。」

「あ、いいです。お話を聞きたいので。」

「そうですか。

 では、次回いらした時に、先ほどのことについてお話する、

 ということでよろしいですか?」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

「わかりました。

 ちょっと、ご説明が長くなるというか、私がお話する時間が

 多くなりますけど、よろしいですか?」

「あ、はい、大丈夫です。」

「では…。

 えっーと、私が以前校長を務めていた定時制高校も、

 不登校経験者は随分入って来ましてね。

 不登校のキャリアの長い子は(笑)、

 小学校3年生の時から、ずっと学校に行けなかった、

 という子もいましたね。」

「えっ?そんなに!

 そういう子でも、高校に入れるんですか?

 だって、内申書とか、どうするんですか?」

「あ、まあ、それは…、今は、入試にもいろいろな仕組みが

 取り入れられているのでね…。

 でも、そのへんの話は、ここでは割愛というか、

 ちょっと飛ばしていいですか?」

「あ、はい。すみません。」

「いえいえ…。

 で、そうした子も含めて、いろんな不登校を経験した子たちが

 集まって来たんですよ。」

「どのくらい、いたんですか?不登校の経験のある子が。」

「不登校経験の長さとか、深刻さとか…、

 まあ、一概には言えないんですが…、

 全体の4割近くの子は、何らかの意味で不登校経験者

 だったんじゃないかなぁ。」

「えっー!そんなに!」

「今の様子はよくわかりませんが、

 私が校長をしていた頃は、そうでしたね。

 で、そうした経験をしている子たちの、言わば集団なので、

 私たち教員も、いろいろと心配したんですよね。」

「ちゃんと通って来れるか?ということですか?」

「まあ、そうですね。

 あとは、そうした子たちは、おそらく集団生活に慣れていない

 というか、苦手なんじゃないかな、という予想もあったので、

 クラスとか、仲間に打ち解けて馴染むか、とかね。」

「なるほど。」

「つまり、学校としては、その子たちが学校を居場所にしてほしい、

 それも、安心して過ごせる、安全な居場所と思ってくれるように、

 いろいろと手を尽くさないといけないな、とね。」

「いい、学校ですねぇ。」

「いや、だって、不登校経験があるということを、百も承知で

 入学を認めたわけですから…、

 やはり、なんとか、それぞれの子が、自分の生き方というか、

 リスタート切ってほしいというのが、学校創った時の強い思い

 でしたからね。」

「・・・・・。」

 

(つづく)

 

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