創作読物 18「友達感覚で過ごせれば、平和」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「確かに反抗期らしきものがなくて、親子というより、

 兄弟姉妹のような、あるいは友達感覚で過ごせれば、

 平和というか、楽だし、楽しくていい、

 と思う親御さんはいらっしゃるでしょうね。」

「そうですね。

 はたで見ていても、うらやましいというか…、

 特に、子どものことでいろいろと苦労させられてる親からすれば、

 そういう様子を見ると、なんか、自分の子育てが悪かったのかなぁ、

 なんて、思っちゃったりもすると思うんですよね。」

「そうでしょうね。

 ただ、そうした、何というか、あまり確執や対立のない親子関係を、

 文字どおり楽でいい、と思う親御さんがいる一方で、

 いや、このままだと、この子はいつまでも自立できないのでは?とか、

 反抗期がなかった反動が、大人になってからやって来るのでは?とか、

 ちょっと不安に思っている親御さんもいらっしゃるんですよね。」

「はあ、そうなんですか。」

「ええ。

 ただ、この、反抗期がないと将来が不安というのも、一概には言えなくて…。

 というのは、さっき言ったように、反抗期は来てるんだけど、

 子どもによっては、反抗心を態度で現わさない性格だったり、

 自分の中で反抗心をうまく消化することができてたり、

 ということもありますんでね。

 そういう場合は、そんなに心配する必要はないと思うんですけど。」

「へえー、なるほど…。我慢強いんですかねぇ…。

 でも、そういう子って、なんかいいというか…、大人っぽいというか…、

 どうやったら、そんな子になるんですかねぇ?」

「うーん。

 こうすればとか、こうやればとか、

 そんな簡単なもんじゃないとは思いますが…。」

「でも、先生、なんかコツというか…、ないんですかねぇ?

 もし、そういうのがあれば、陽香とのことにも、

 活かせるんじゃないかなと思うんですけど…。」

「そうですね。

 まあ、簡単に、敢えて一言で言ってしまえば…。」

「ええ、ええ。」

「子どもの意見に耳を傾けているか、ってことかと思いますよ。」

「え?うん?

 でもそれだと、単に友達感覚って気がするんですけど…。

 それでいいんですか?

 やっぱり、友達感覚のほうがいいということなんですか?」

「いやいや、子どもの意見に耳を傾けるということは、

 子どもの言うことを何でもそのまま受け入れる、

 ということとは違うのでね。」

「と、おっしゃると?」

「もちろん、子どもの言うことを、何でも頭ごなしに否定して、

 結果、子どもに我慢を強いる、というのはいけませんが、

 かといって、逆に、子どもの言うことを何でもそのまま受け入れる、

 というのも、大いに問題ありですよね。」

「何でも子どもの思い通りにさせ過ぎてはいけない…、

 ということですか?」

「そうですね。

 つまり、そこには親子間の対立、葛藤が生まれませんよね?」

「まあ、そうですね。

 でも、なんか、私も含めてですが、

 今の親って、敢えて子どもと対立するのを避けてるような気も…

 するんですが…。」

「そうですね。

 おっしゃるように、親のそうした気持ちが、

 結果的に、子どもを甘やかすというか、

 それ以上に、子どもの中の葛藤を起こさせずに、

 結局、それが子どもの成長を遅らせている…、

 そんなふうにも言えるのかもしれませんね。」

「なるほど。

 でも、やっぱり、いざこざって嫌ですからねぇ…。

 できれば、争わずにそのまま穏便にというか…、

 やはり、子どもとのいい関係を求める親の気持ちも

 よくわかりますけどね。」

「ええ。

 でも、今おっしゃった、そのいい関係ってのがどうなのか、とね。」

「いい関係ってのはダメなんですか?」

「要は、それが本当にいい関係なのかって、ことですね。

 つまり、とりあえず、目先しか見ていないんじゃないでしょうか?

 問題のないいい関係というより、

 ほんとは問題があるのに、それを見ようとしないで、

 あるいは、解決しようとせずに、先送りして…、

 とりあえず平和そうないい関係を保とうとしてるんじゃないですかね?」

「うーん…。

 だとすると、いつかは爆発すると?」

「ええ。

 それがどういう形で現れるのか、

 結局、現れずに済むのかは、ケースバイケースでわかりませんが、

 ただ、問題が解決されないまま、潜在してるとすれば、

 いつかはそれが何らかの形で現れても、不思議ではないですよね?」

「そうですね…。

 そう考えると、なんか怖いですね。」

「ええ。

 なので、大切なことは、

 子どもに干渉しすぎるのは、もちろんまずいですが、

 かといって、無関心を装って、目の前の問題を直視しようとしない、

 というのもまずい、ということでしょうね。

 目の前の問題を直視しないということは、結局は無責任というか…、

 結局、自分可愛さでやってることで、決して相手のためにはならないし、

 もちろん、自分のためにもね…。

 まあ、でもこれは、親子関係に限ったことでもないですけどね。」

「うーん。

 なんか、難しいですねぇ…。」

「ええ。

 理屈だけじゃないですからね。

 ただ、反抗期がない、あるいは現れない子がいた時に、

 単に、子育てが楽だと喜ぶことも、

 また、このままでは将来が不安だと心配することも、

 あまり極端にならないほうがいいのかな、とは思いますね。」

「あまり極端にならない…、ねぇ。」

「なんか、ちょっと混乱して来ましたか?」

「あ、はい。そうですね。ちょっとね(笑)。

 それに…。」

「何ですか?」

「目の前の問題を直視しない夫は、やはり無責任なんだなあと。」

「あ、そう来ましたか(笑)。

 じゃ、ちょっと別の角度からお話を続けましょうか?」

「ええ。はい、お願いします。」

 

(つづく)

 

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