創作読物 22「権威主義に、知らず知らずのうちに染まって」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「結局は、日本て、民主主義の国ではなくて、権威主義なんでしょうね。」

「権威…主義?

 なんか今日は、いろいろと難しい言葉がたくさん出てきますね(笑)。」

「ああ、そうですね(笑)。

 権威主義ってのは、簡単に言うと、

 上の者が、権威をふりかざして下の者を服従させたり、

 一方で、下の者も上の者に無批判に従ったりすることなんですけど…。」

「なるほど…。

 権威っていう言葉は聞いたことがありましたけど、

 権威主義ってのは初めて聞きました。 

 でも、じゃあ先生は、今の学校は、権威主義だっておっしゃるんですか?」

「飯塚さんは、どう思います?」

「ええ。

 確かに、なんか偉そうにしてる先生もいますけど、

 生徒目線に立った、優しい先生も多いとは思いますけどねぇ。」

「そうですね。

 もちろん、生徒思いの、いわゆるいい先生もたくさんいます。

 でもね、そういう先生たちの頑張りにも関わらず、

 結局は、体罰とか、スクールセクハラとか、教師による生徒いじめが

 なくならないでしょ?」

「そうですね。」

「なので、それは権威主義に、知らず知らずのうちに染まってしまってる

 ってことかとね。」

「先生が、最初に、学校って絶対?って聞いたのは、

 そういうことだったんですか?」

「ええ、まあ、そういうことです。

 なので、そういった学校とか教師とかが、

 結局は、伸びるはずの生徒たちを、

 特に心の成長という点で、阻害する側というか、

 そういう役割を持ってしまっているんじゃないかと、ね。

 そう思ったんですよ。」

「なるほど、それが本当だとすると、とっても怖いですね、学校って。」

「もちろん、陽香さんの学校がそうなのかは知りませんよ。

 なので、あくまでも一般論というか、可能性の話をしたまでなんですが。」

「陽香の学校は、そうじゃないと信じたいですけど、

 親って学校のこと、正直わかんないですからね。

 少しは、疑ってみたほうがいいんですかね?」

「うーん。

 疑うというか…、

 先入観は、あまり持たないで、ちゃんと見たほうがいいと言うか…。」

「でも…、

 先生は、高校の先生というか、校長先生だったんですよね?」

「ええ。」

「なのに、何て言うか…、

 学校のことをかなり悪く言ってるんで…。」

「ああ、不思議ですか?」

「あ、はい。

 不思議というか、何でなのかなって?」

「何でだと思います(笑)?」

「いやあ、ちょっとわからないですねぇ(笑)。」

「でしょうね(笑)。

 でも、ちゃんと理由はありますよ。」

「え?何なんですか、その理由って?」

「ええ。

 ただ、今日は残念ながら時間が来てしまったので…。」

「え?

 ああ、ほんとだ。

 なんか、これで終わると後ろ髪引かれるって感じですねぇ。」

「そうですか(笑)。

 じゃあ、次回、この続きでお話しますか?」

「ええ、ぜひお願いします。

 ただ、次回は、施術なしで、このクーポノってのだけでも大丈夫ですか?」

「ええ、もちろん大丈夫ですよ。」

「先生、ところで、このクーポノってのは、どんな意味があるんですか?

 普通のカウンセリングっていうのとは、何か違いがあるんですか?」

「ああ。

 クーポノってのは、ハワイ語で「ナチュラル」「ありのまま」という意味

 なんですよ。

 ここは、基本的にはミオンパシーという新しい手技療法で、

 お客様のフィジカル面のケアをする所なんですけど、

 最初にいらした時にお話したように、

 人の身体と心って、とっても密接に絡んでるのでね。」

「確かにそうですね。

 私もはじめは身体の不調にばかり気が行ってましたけど、

 心というか、気持ちの持ちようが、かなり身体にも現れるってことが

 よくわかってきましたからね。

 どっちか1つだけ治そうとしても、なかなか難しいってことですよね。」

「そうですね。

 病は気からって、よく言ったもんですよね。」

「ええ、まったく。」

「なので、ここではフィジカルケアだけではいけないな、と思って、

 心身ともにお客様がナチュラル、ありのままの姿になってもらうには

 どうしたらよいかと考えて…。」

「それで、カウンセリングもなさってるんですね。」

「ええ。

 カウンセリングというと、ちょっと敷居が高いかもしれないので、

 もう少し、ザックバランというか、それこそありのままで、

 話したいことについて、お互い意見交換するって感じが良いかと思って…。」

「ええ。

 そのほうが、相談に乗ってもらうほうも気が楽というか…、

 本音も出しやすいですしね(笑)。」

「なら、良かったです(笑)。

 では、えーと、来週のまた月曜日でよろしいですか?

 13時からクーポノということで。」

「あ、はい。それでよろしくお願いします。」

「わかりました。

 では、お気をつけて。」

「はい、ありがとうございました。」

 

(つづく)

 

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