創作読物 27「なぜ?って言葉を大事にしてる」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「これも語り出したら、切りなく出て来ちゃうんですけど…。
ただ、1つだけ挙げれば…、
フィンランドの学校では、子どもも教師も、
Why、つまり、なぜ?って言葉を大事にしてるんですよね。」
「なぜ、ですか?」
「え?
今のは質問ですか?
それとも、早速使ったんですか?なぜって。
フィンランドみたいに(笑)。」
「え?
ああ、いえいえ、違います、違います(笑)。」
「そうですか(笑)。
なぜって、ね、フィンランドでは、ミクシィって言うんですけど…ね、
例えば、教師が生徒にある質問をして、一人の生徒がそれに答えたとする。
するとね、すかさず教師は、ミクシィ?
つまり、それはなぜ?って聞くんですね。」
「ほう。」
「すると、その生徒は、それは何々だからって答えるんですけど、
そうすると、今度は教師だけでなく、他の生徒もそれに対してミクシィ?
って聞くんですよ。」
「へえー、すごいですねぇ。
それがどんどん続くんですか?
でも、なんか、それだけ聞いてると、すごいとは思うんだけど…、
なんかしつこいというか…。」
「ほんとですねぇ。
でも、しつこく聞くんですよね、ミクシィ?と。」
「でも、それだと、一つ一つ時間がかかるから、
教科書が終わらないとか、ないんですかねぇ?」
「当然、終わらないでしょうね、予定どおりには。
でも、そこが価値観の違いというか…。
そもそも教科書を終わらせるっていう発想自体がないですからねぇ。」
「え?
それってどういうことですか?」
「教科書ってね、
もともとは子どもたちの興味関心を引き起こすためのきっかけとして使う
に過ぎないわけで、教科書を終わらせれば、それで勉強も終わりってこと
ではないでしょう?」
「へー、そうなんですかぁ。
でも、言われてみれば、何というか…、納得ですね。
これも、常識の違いってやつですね(笑)。」
「ええ、日本の常識とは違いますね。
とにかく教科書を終わらせることよりも、子どもたちの好奇心とか、
興味関心、あるいは、何に対しても鵜呑みにしないで、
疑問に思ったことは聞くっていう習慣や癖をつけることを
最優先してるんでしょうね、フィンランドでは。」
「なるほど。
それが、フィンランドでは常識っていうか、当たり前のことなんですね。」
「日本とはだいぶ違うでしょ?」
「大違いですね。」
「でも、どっちがいいと思います?
日本とフィンランドと。」
「そうですねぇ…。
お話伺って、改めて考えると…。
なんか、日本の教育って言っていいのかどうか、わかりませんが…、
日本では、型どおりっていうか、キッチリしてるっていうか…、
なんか、予定をこなすことを一番大事にしてるようで…。」
「なるほど。」
「なので、例えば授業中に先生が、何か質問ありますか?とは
聞かれるけど、ほんとに質問する生徒はあんまりいなくて…。
まあ、小学校の頃は、それでも何人かは手を挙げるんでしょうけど、
中学とか、高校とか、上に上がれば上がるほど、そういうのって
少なくなりますよねぇ?
それって、フィンランドではどうなんでしょう?」
「どうなると思います?」
「うーん、たぶん、質問するんでしょうねぇ。」
「ええ、そうですね。
しかも、高校生でも、もう大人みたいな顔つきしてて(笑)、
大学生や大人がするような高度な質問をするんですよね(笑)。」
「へー、そうなんですか。」
「どうしてそうなるんだと思います?」
「それはやはり、小さいころから鍛えられてるってことですか?」
「そうでしょうね。
自分が言ったことや人が言ったことに対して、
常にミクシィ?って聞いたり、聞かれたりして…、
それ、常に頭を使ってなきゃできないし…、
つまり、思考のトレーニングが常にされてるってことでしょう?」
「そうですよね。
何かを記憶したり、覚えるって勉強以上に、頭使うでしょうね。」
「ですね。
だいたい、今はスマホやパソコンが身近にあるわけなんで、
何でもググれば書いてありますよね。
だから、何かを暗記するなんてことは、ほとんど必要ないんですよね。」
「確かに、昔とは大違いですよね。」
「なので、大事なのは、考えることとか、自分で調べることとか…、
でも、それって、原点は、疑問に思うってことですからね。」
「だから、ミクシィ?って言ったり、聞いたりすることが大事なんですね!」
「そう思います。」
「なるほどねぇ。
そう考えると、日本の学校では、確かに先生は何でも聞きな、とは
口ではそう言ってくれても、フィンランドみたいに、なぜ?なぜ?って
生徒が聞き続けたら、きっと、先生って怒りだすんじゃないかな、
なんて、思ったりしますね(笑)。」
「もしも、質問しなさいってのを、形式的に言ってるんだとしたら、
おっしゃるとおりかもしれませんね。
第一、まあこれは細かな話ですけど…、
教師が授業を行うために事前に作る授業案てのがあるんですけど、
それには、ここで質問を受ける、なんてことが書いてありますからね(笑)。」
「へー、そうなんですね。
それって、まさしく形式的ですよねぇ(笑)。
それに、さっき言ったように、先生って、しつこく質問する生徒は、
ほんとは、心ではウザいって思ってるのかもしれないというか…、
そういう生徒よりも、静かに先生の言うことや板書を書き写す
生徒のほうが扱いやすいって思ってたりするんですかねぇ?」
「うーん。
まあ、先生によるんでしょうけど…、
でも、質問する時に手を挙げさせるってのも、
まあ、形から入ってるとは言えると思いますね(笑)。」
「それから、なんか、せっかくいい質問しても、
何だ!その聞き方は!なんて怒られたりして…、
それだと、子どもってやっぱり委縮して…、
もう質問したくても、しなくなっちゃうかもしれませんよねぇ。
なんか、礼儀をわきまえろ!とか…、
何て言うか…、質より形っていうか…、
そういうことを求められてきたような気がしますねぇ。」
(つづく)
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
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