創作読物 44「生徒にアンケートで体罰とかについて聞くんですか?」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「あ、もしもし、藤井先生ですか?」
「あ、はい。
トリニティ・サロン エコル横浜の藤井ですが…。」
「あ、先生、飯塚です。
いつも、お世話になっております。」
「あ、飯塚さん。
どうなさいました?」
「ええ。
実は、明日の予約なんですけど…、
明後日の同じ時間に変更していただくことは可能ですか?」
「あ、変更ですか…。
ちょっと待ってください。確認しますので…。
あ、大丈夫ですね。」
「あ、そうですか、良かったぁ。
いや、実はですね…、
陽香が、そちらに一緒に行きたいって、言ってくれたもんで…。」
「ほう、そうなんですか。」
「ええ。
実は、先生とこんな話した、あんな話もした、なんてことを話してはいたんですが、
そしたら…、ほら、この前、私の頭痛を治してくださったじゃないですか。」
「あ、ええ。」
「その話もしたんですよ…、
そしたら、なんか、それに興味を持ったらしくて…。
実は、陽香も、ここのところ、頭痛に悩まされることが多いみたいで…。」
「そうなんですか。
そう言えば、いつか、肩が凝ってるようなこともおっしゃってましたもんねぇ。」
「ええ。
やはり、肩こりも関係してるんでしょうね。
でね、明日、私が予約してるけど、代わってあげてもいいわよ、って言ったら、
なんか、もじもじしてるんで…、
行こうよって、ちょっと強く促したら…、
明日はちょっとやりたいことがあるんで、
明後日だったら、って言い出したんですよ。」
「ほう。」
「じゃ、私が先生の予定を聞いてあげるってことになって…。」
「なるほど。
明後日だったら大丈夫ですから、お越しください。
えーと、お二人でお見えになりますか?」
「はい、そうですね。
ですが、私は今回は連れてくだけで、
施術はまた別に日に予約、ということでもよろしいですか?」
「あ、わかりました。
じゃあ、明後日は陽香さんの施術ということで…。」
「あ、はい、お願いします。
で、施術中は、私はどうしたらいいですかねぇ?」
「そうですねぇ。
それは、陽香さん次第ってことではどうですか?」
「陽香次第?」
「ええ。
施術中も一緒に部屋に入るか、
それとも、控室で待ってるか、
あるいは、送るだけで、お母さんはそのまま帰るか…。」
「なるほど。」
「まあ、当日、その場で陽香さんに決めてもらえばいいんじゃないですか?」
「あ、はい。
そうですね。わかりました。
で、私の時みたいに、施術の後に、そのままクーポノってのもありですか?」
「ははは。そうですね(笑)。
まあ、そのあと、予約は暫く入ってないので、時間的には可能ですけど、
それも、まあ、成り行きというとなんですが…、
施術しながら、いろいろ話はできるので、
その話の中身というか、方向によってはそうなるかもですが…、
まあ、それも陽香さん次第かな(笑)。」
「そうですね(笑)。
とにかく、よろしくお願いします。」
「あ、はい、わかりました。」
「あ、先生、
ところで、平井先生は、あの後そちらに行かれたそうですね?」
「あ、ええ、見えましたよ。
でも、よくご存じで。」
「ええ。
翌日、平井先生から、ちょっとお電話いただいて…、
その時に、聞きました。
で、平井先生とはどんなお話したんですか?」
「うん。
随分、長い時間、いろいろとしゃべっちゃいましたよ(笑)。」
「え?そうなんですか?
どんなこと話したんですか?」
「まあ、それは内緒…、ということにしておきましょう(笑)。」
「え?そうなんですか?」
「ま、そのうち、平井さんが話すんじゃないですか?」
「そうですかぁ。
あ、でね、先生。」
「はい?」
「あのう…、
最近の学校は、生徒にアンケートで体罰とかについて聞くんですか?」
「え?
ああ、そうですね。
そういう聞き取りというか…、
アンケート調査はしてますね。
もちろん匿名で。」
「そうなんですね…。
いや、昨日、高校からそれが郵送されてきまして…。
それを陽香にそのまま渡したんですけど…。」
「ええ。」
「なんか、陽香の高校で、体罰があったということなんですかねぇ?」
「あ、いや、あれは全校調査なんで…。」
「そうなんですか。」
「ええ。
で、それがどうかしましたか?」
「あ、いえ。
どうということもないんですけど…、
ただ、陽香がそのアンケート用紙を見せてくれて…。
その時に、ポツリと…、
中学校でも、こういうのやってくれればよかったのに、って言ったんですよ。」
「そうなんですか。」
「中学校ではやってないんですかねぇ?アンケート。」
「いや、そんなことはないと思うんですが…。
もしかしたら、陽香さんは学校に行ってなかったので、
調査対象から漏れたというか…、
用紙がもらえなかったのかもしれませんね…。」
「そういうことなんですかねぇ…。
でも、なんか、そういうのって、
不登校とか、そういう子にこそ、したほうがいいんじゃないでしょうかねぇ。」
「おっしゃるとおりですね。
でも、陽香さんのその言葉って、なんか、意味深ですね。」
「ええ、そうなんです。
なんかあったのかと思って…。
でも、陽香はそれっきり何も言わなかったんで…。」
「そうですか。」
「先生なら、そのあたりも聞いていただけるのかなって…。」
「あ、はい。
そうですか。
でもまあ、それも、さっき言ったように、陽香さん次第でね。」
「ええ、そうですね。
では、明後日、よろしくお願いします。」
「わかりました。
お気をつけてお越しください。」
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
今すぐ予約が確定するオンライン予約はこちらから
その他、お問い合わせ等は、0467-87-1230(やな、いたみゼロ)まで。