創作読物91「出足のエンジンがなかなか掛からない」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「たとえば…、
朝も目覚まし時計や家の人に頼らずに、まず自分で起きてみる、とか、
朝ごはんも食べたくないからといって、何も食べないのではなく、
まずは食べ物を口に含んで噛んでみる、とか、
勉強をしないことを、やる気が起きないから、
というせいにするのではなく、まずは机に向かって勉強を始めてみる、とか。」
「うーん。
正直、そう言われれば、
そうなのかな、って気もするんですが…。」
「なかなか実行、実践が難しい…、かな?」
「ええ…、そうですね。
理屈と言っちゃうと、失礼なんですが…、
最初の一歩というか…、
出足のエンジンがなかなか掛からない、というか…。」
「うん。
そうだねぇ。
誰にも共通する悩みかもね。」
「ですよね、きっと。」
「でもね、
それについて、面白い解説をしてる人がいるよ。」
「え?
どんなですか?」
「うん。
人の頭の中にはね、
なんでも理性的に判断して、
テキパキと物事やノルマをこなしていこうとする部分があるんだけど、
同時に、それを阻むというか、邪魔をする、
先延ばしするサルが住んでるんだって。」
「え?」
「いや、もちろん、たとえ話だよ(笑)。」
「そうですか…。
ちょっとびっくりしました(笑)。」
「でもね、
絶妙なたとえ話なんだよ。」
「知りたいです。
教えてください。」
「たとえばね、
明日、大事な試験があるというのに、
急に、今読まなくてもいい小説とか引っ張り出してきて読んで、
貴重な時間を使っちゃって、自分で自分の首を絞めるってこと、
よくあるでしょ?」
「私、それです(笑)。
自分のこと言われてるみたい(笑)。」
「そっか(笑)。
そういう時にはね、
理性的な脳が、今すぐ試験勉強やらなきゃ、って思ってるのに、
先延ばしするサルがしゃしゃり出てきて、
面白い小説があるんだけど、とか、
今、とっても笑えるテレビ番組やってるよ、とか、誘惑するんだって。」
「うんうん。
わかります(笑)。
で、結局、その誘惑に負けちゃうんですよね。」
「うん。
誰でも経験してることだよね。
でも、明日の試験は待ってくれないから、
しまいには、急に焦りだすでしょ?」
「そうそう。」
「その焦りをね、
その人は、パニック・モンスターって呼んでんだけど、
先延ばしするサルは、そのパニック・モンスターが大の苦手でね。
モンスターが現れると、スゴスゴと逃げていくわけ(笑)。」
「すると、我に返るってことですか?」
「うん、そう。
で、急に焦りだして、結局、徹夜しちゃったりしてね(笑)。」
「まさしく(笑)。
先生も、そういうことないですか?」
「うん。
でも、徹夜する羽目になる前に、
我に返るかな、私は(笑)。」
「理性的なんですね(笑)。」
「まあ、だから、
そのパニック・モンスターが出てきて、
先延ばしするサルを、追っ払ってくれるタイミングが、
人それぞれに違うってことなんだろうね。」
「なるほど。
じゃあ、意識してパニック・モンスターを
迎え入れればいいんですね?」
「そうだね。
でも、その人はね、
もう一つ重要なことを言っててね。」
「え?
何ですか?」
「うん。
テストとか、レポートとか、
何かのプレゼンの発表とかは、
期限とか、締め切りがあるでしょ?」
「そうですね。」
「そういった期限とか、締め切りがあるものは、
最終的にパニック・モンスターが現れて、
まあ、徹夜するにしても、それなりの準備ができるからいいんだけど、
問題は、締め切りとかがないものに対する対処なんだね。」
「締め切りがないものですか?」
「うん。
つまり、人にやらされるものではなくて、
自分が自分のために、自分の意志で決めたことって、
案外多いでしょ?」
「自分の意志で決めたこと…?」
「うん。
日本の場合、
生徒とか、学生でいるうちは、
自分の意志というよりも、親だったり、教師とかが、
あなたはこうしたほうがいいというか、
こうしなさい、って半ば強制されることが多いけど、
それでも、大人になると、自分の意志で物事を判断して、
決めなきゃならないことって、たくさん増えてくるんだよね。」
「はあ。」
「でも、人の指示ではなく、
自分でやると決めたことには、締め切りがないものも多いので、
そういう時に、先延ばしするサルが出てきて、誘惑されても、
サルの天敵のパニック・モンスターは、出て来ないから、
結局は、サルの思うままに操られちゃうって、
その人は、言うんだよ。」
「なんか、説得力ありますね。」
「そうでしょ?」
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
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