創作読物93「みんな違って、みんないい」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「そうだね。
ぜひ、そういう、良い癖をつけてほしいけど…、
でも、意地悪を言うようだけど、
その丁寧な説明ってのも、
結局は、自分の目や頭から得た情報を基にするわけだから、
こう言っちゃなんだけど、偏ってるとも言えるんだよね。」
「まあ、
確かに、それはそうかもしれませんが…、
でも、偏らないって、難しくないですか?」
「うん、相当難しいと思うよ。
だって、やっぱり、人って自分の目や頭や感覚?
つまり、全て主観で捉えて生きているわけだからね。」
「ですよねぇ…。」
「でも、それでいいと言うか…、
それしかできないんだから、それはしょうがないよね。
でも、だとすると、大事なことは、
話半分って言うと、説明してくれてる人に失礼だけど、
でも、聞きながら、ああ、この人は、この人の主観で話してるんだなって、
思いながら聞く必要があるってことなんじゃないかな。」
「うーん。
でも、それもなんか、悲しいというか…、
人を信じたいという面もありますからねぇ…。」
「まあ、
それはそうなんだけど…、
ただ、やはり冷静に考えてみると、
たとえば、ある人が、あることについて、別の人に伝えたり、
話したりする時は、結局は、自分の主観が基になってるから、
いいところは、自然にちょっと大げさに伝えたり、
脚色しちゃったりしてるでしょ。
で、反対に、自分があまり気に入らないところは、
逆に、マイナス面を誇張したり、批判的なコメント入れたりね…。」
「そうですね。
きっと、人って無意識のうちに、そうしてるんでしょうね。
でも、だとすると、平等というか、真っ新な目や頭で見たり、
考えたりするって、実際には無理ってことなんですかね?」
「まあ、
神様じゃないから(笑)、
でも、人はそれでいいんじゃないのかな?」
「それでいい?」
「うん。
ほら、相田みつをさんが言ってるでしょ、
みんな違って、みんないい、って。」
「ああ、そうですね。
みんな違って、みんないいって、
肌の色とか、外見上のことを言ってて、
なんか、差別はよくないという意味で取ってましたけど、
考えてみたら、考え方とか、内面のことも言ってるんですね。」
「そうだね。
たとえば、同じものを見ても、
AさんはAさんなりに、
BさんはBさんなりに、見るわけで、
それを、AさんがBさんに対して、
あなたの見方は間違ってる、って言うことで、
つまらない争いごとの種が蒔かれるってことが、あるわけでしょ?」
「そうですね。
自分の主観が絶対だと感じたり、
主張した時点で、ろくなことにならないですよね。」
「まあ、
主張すること自体は、大事なことだけど、
自分の考えに固執するかどうかで、
その人の人間性と言うか、器の大きさがわかるとも言えるかね。」
「器の大きさですか…。
その点、私なんか、まだまだ器が小さいというか…、だめですね(笑)。」
「陽香さんは、まだまだこれから幾らでも大きくできるさ(笑)。
それに、年齢の割には、大きい器だと思うけど。」
「そんなことないですよ。
考え方も狭いし…。」
「そういう自覚があるってことが、
器が大きくなる可能性があるってことなんだよ。」
「ええ?
そうですかねぇ…。」
「うん。
それに、大器晩成ってこともあるしね。」
「若い時は、なかなか目が出ない、ってことですか?」
「そう言ったら、身も蓋もないけど…。
ほら、今は、スピードが求められる時代で、
なんでも早いほうがいい、みたいな風潮があるけど、
そんなに焦ることはないわけで、じっくりと晩成していけばいいのさ。」
「うん。
ただ、なんか、急き立てられるって言うか、
いつも何かに追いかけられてるふうに感じることは、よくありますね。」
「うん。
でも、こんなこと言うのもなんだけど、
陽香さんは、だから、不登校という選択をして、
自分なりのペースを維持しようとしてるんじゃないの?」
「え?
あ、いや…、
そんなふうに言われたのは、初めてですね。
でも…、
そう言われてみれば、そうなのかもしれません…、ね。」
「うん。
ところで、陽香さんさ。」
「はい?」
「陽香さんとは、
こうしていろいろと話してきたから、
もうそろそろいいかな?と。」
「何がですか?」
「陽香さんが、不登校を選んだ原因、理由。」
「あ、
そうですね…。
もう、先生となら、話せそうですね。」
「そっか。
ただ、ごめんね。
今日は、これから別の人の施術が入ってるから…。」
「あ、はい。
もちろんです。
私のほうから、急に押しかけて来たんですから(笑)。」
「明日、4時から予約してるから、明日でいいかな?」
「はい。
わかりました。
じゃあ、なるべく丁寧に説明できるように、考えておきますね(笑)。」
「そうだね。
丁寧に、主観的に説明してね(笑)。」
「わかりました。
じゃあ、これで失礼します。
今日は、ありがとうございました。」
「はい。
じゃあ、気をつけて帰ってね。」
「はい、さようなら。」
「さようなら。」
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
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