創作読物96「私も金魚の糞仲間だったのかもしれません」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「さて、じゃあ今日は、
じっくりと陽香さんの話を聞かせてもらおうかな。」
「ええ。
そのつもりで来たので、
よろしくお願いします。」
「うん。
何を、どこから話してもいいよ。
話しやすいところからで。」
「はい。
ありがとうございます。
じゃあ、まず…、えっと…、
中学の時に、友達にいじめられて…、
それがきっかけで不登校になったというのも、
まったくの嘘ではなくて…。」
「あ、いいよ。
話せる範囲で。」
「ええ、大丈夫です。
実は、このあと、順を追って話しますが…、
あることがあって、なんか、気持ちが動揺してたというか、
自分でも混乱して、どうしたら良いか、わからなくて…。
そんな時に、運悪くというか…、
いつも仲良くしてた友達の…、
あ、そうですね、ここでは、まだ一応、K子ということにさせてください。」
「うん。」
「そのK子が、
ちょうど私がムシャクシャしてた時に、
今思えば、ほんとに些細なことなんですけど、
私を茶化すというか、からかうようなことを言ったんですね。」
「うん。」
「で、
普段から、私たちは、そんな冗談交じりに、
お互いをからかうようなことは、普通にしてたんですけど…、
その時に私は、ほんとに混乱してたのと…、
その時のK子の言葉は、いつもよりも過激だったんで…、
K子の言葉が、胸に突き刺さっちゃって…、
なので私も、その時は珍しく、売り言葉に買い言葉ではないけど、
K子をひどく傷つけるような言葉を返しちゃったんです。」
「うん。
そしたら?」
「ええ。
そしたら…。
K子は、プライドが高いというか…、
クラスの中でも、リーダー格で、
いつも、子分じゃないけど、
何人も取り巻きが居るというか…、
まあ、今、思えば金魚の糞みたいなんですけど…。」
「金魚の糞か(笑)。」
「ええ(笑)。
そうなんです。
つまり、K子の言うことに逆らうようなことを言う子、
と言うか、言える子は居なかったんですよね。」
「陽香さんは、どうだったの?」
「私も、K子のそういった、こう、親分じゃないですけど、
子分みたいなのを引き連れて、ちょっと粋がってる様子を見るのは、
どうなのかな?って感じで、あまり気分は良くなくて…、
でも、特にそれに対して何か言う、ということもなかったので、
結局は、私も金魚の糞仲間だったのかもしれませんね。」
「糞仲間ね。
でも、その糞の一つが反撃したってわけだね。」
「ええ。
K子にしてみたら、まったく予想外と言うか…、
それも、結構仲の良かった私が、反旗を翻したというと、大袈裟ですが、
でも、確かにあの時は、反抗したんですよね。
そして、K子が一番気にしてることを、真正面から指摘しちゃったんで。」
「そしたら、大変なことになった、と?」
「そうですね。
その時は、K子は真っ赤な顔して怒って…、
でも、捨て台詞みたいなのを言って、
その場から離れて行ったんですけど…。」
「それで、結局、陽香さんが、
村八分になったのかな?」
「はい、そうなんです。
K子の復讐と言うか、
反撃は、とても速かったですね。
その直後から、まずはLINEで、私に対する悪口が始まり、
それが、あっという間に、クラス中に広まって…。」
「でも、
それは、学校で問題にならなかったの?」
「なりました。
私は、先生とかに言いつけることはしなかったんですけど、
私の友達が、担任の先生にLINEを見せたみたいで…。」
「じゃあ、K子さんたちは、
こってり絞られたのかな?」
「そうですね。
でも、それで却って、私の立場はもっと悪くなって…。」
「うん。」
「一応、
K子たちや、その親も、
学校に呼ばれて、私や親に謝るという…、
まあ、形式的な儀式みたいなこともやって…。」
「儀式ね。」
「だって、
謝るって言っても、口だけでしたからね。特に、K子は。
あの時のK子の顔は、今も思い出したくないんですけど…。」
「そっかぁ。
じゃあ、その後も相変わらず、いじめというか、
村八分状態は、続いたんだね?」
「ええ。
もっと、陰湿になったと言うか…。
それまで、仲良かった子も、
K子に睨まれるのが怖くて…、
私から離れて行きましたし…。」
「先生たちは、
そうしたことに対しては、何かしてくれたの?」
「直接的には、何もなかったと思います。
学活とか、道徳の時に、
みんなで仲良く、みたいな話題はありましたけど…。
様子を見られちゃった、と言うか…。」
「で、
陽香さんは、学校を休みがちになったのかな?」
「そうですね。
そのほうが楽だったので…。」
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
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