創作読物102「去る者は日々に疎し」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「そして、

 4番目に多かった後悔が、

 友人と連絡を取り続ければよかった、という後悔」

「連絡を取り続ければよかった…、ということは…。」

「うん。

 途中で、疎遠になって、それっきりということかね。

 たとえば、陽香さんも、小学校や中学校で、

 仲良かった友だちと、今はもう疎遠になって、

 連絡を取ってないとか、連絡がとれなくなっちゃった友だちって、

 居ない?」

「ええ…。

 居ますね。」

「ホスピスで亡くなるのは、

 ほとんどが高齢者だろうから、

 何十年も生きてる間には、

 そういう疎遠になった友人て、たくさんいるんだと思うけど、

 いよいよ死が近づいてくると、

 そういう友人のことを、懐かしく思い出す、ってことなんだろうね。」

「そうですかぁ…。

 でも、友人関係を続けるのって、

 難しい、と言うか…、なかなか大変な気もしますけど…。」

「うん。

 喧嘩別れでもしちゃえば、疎遠になるのもわかるけど、

 そういうことでもなくて、

 気づいたら、連絡も取ることもなく、疎遠になってしまった、

 という友人も、きっと多いんだろうね。」

「別に、仲が悪くなった、とかじゃなくてですか?」

「うん。

 もちろん、友人を大事にして、

 小まめに連絡を取る人もいるだろうけど、

 去る者は日々に疎し、じゃないけど、

 自然に距離が生まれて…、

 それが、物理的な距離の場合もあるし、

 心理的、精神的な距離が生じる、ってことも

 あるんじゃないかな。」

「先生は、

 どうなんですか?」

「私?

 ああ、私はまだ死が近いとは思わない…、

 というか、思いたくはないけど(笑)。」

「あ、

 ごめんなさい、そういう意味ではなくて…、ですね…。」

「うん、いいよ(笑)。

 そうだねぇ…。

 私も、昔、仲が良かった友人たちのことを、時々考えるよ。

 今は、どうしてるのかな?とか、何してんのかな?とかね。」

「そういう人たちに、会いたいって、思いますか?」

「そうだね。

 ただ、居場所とか、

 連絡手段を探してまで、会おうとはしないかな…。」

「それは、なぜですか?」

「うーん。

 まだ、私は死なない、と思ってるからかもね(笑)。

 でも、死期が近づくと、

 人は、友人と連絡を取り続ければよかった、って後悔するらしいから、

 ほんとは、今何してんだろうな、って思った時に、

 何らかのアクションを起こしておいたほうがいいんだろうね。」

「でも、それって、なんか、怖くないですか?」

「怖い?」

「ええ。

 自分は、相手のことを覚えてても…。」

「ああ、なるほど。

 相手には、忘れられてた、とか…、

 覚えてても、会いたくないって言われたり…、とか?」

「ええ。」

「そういうことも、あるかもねぇ…。

 片思いは、異性間だけじゃないだろうからね(笑)。」

「片思いだとしたら、

 なおさら怖いと言うか…、

 ショック受けます…ね。」

「うん、だろうね。

 でもね…、

 片思いだったなら、

 むしろそれがはっきりわかったほうがいいのかもね。」

「どうしてですか?」

「だって、それがわかれば、

 もう、その人に連絡取りたいとか、

 会っておけばよかった、って思うこともなくなるでしょ?」

「気持ちの整理がつく、ってことですか?」

「だね。

 そして、本当の友人探しと言うか、

 再会をお互いに懐かしめる人に会うことに、

 エネルギーを注ぐことができるでしょ?」

「なるほどぉ…。

 そういうのを、プラス思考って言うんですね。」

「プラス思考か…、

 なるほど、そういう見方もできるか。」

「でも、片思いかどうか、確かめるのも、

 勇気が要る、と言うか、大変そう。」

「あのさ、

 いつの間にか、恋愛ぽい話になっちゃってるけど、

 単に、旧友に会うって話だからね、元々は(笑)。」

「あ、

 そうでしたね(笑)。」

「恋愛と言えば、

 3番目に多い後悔が、

 思い切って自分の気持ちを伝えればよかった、ってことだよ。」

「それは、異性間のことを言ってるんですか?」

「そうとも限らないんだろうけど、

 そう考えると、わかりやすいんじゃない?」

「ああ、そうですね。」

「でも、これって、

 日本人は特に苦手なことだねぇ…。

 現に、陽香さんだって、今日ここに…。

 あ、ごめん。

 ちょっと、余計なこと言っちゃったね。」

「いえ、いいんです。

 先生に、いろいろと気を使っていただいてることは、わかってます。

 なるべく、話しやすい雰囲気というか…、作っていただいて…。

 でも、大丈夫です。

 この、後悔の話を全部聞いたら、ちゃんと話しますので。

 私自身が後悔しないように…。」

 

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