シンガポール事情:兵役編その7

 

2か月間のトレーニングを経て、IPPT試験に合格した後に待っていたのは、

射撃訓練でした。

シンガポール軍では「SAR21」というライフルが使われていますが、

まずは射撃練習に入る前に、ダミーのライフルで銃のメカニズムと撃ち方を

教わりました。

それを理解した後、実弾訓練に入ることができます。

私はようやく本物のライフル銃に触れることができました。

軍隊に入る前、家ではプレイステーションなどでライフル射撃を

したこともあったので、ライフルはそれほど重くなく、

標的に当てるのも簡単だと思っていました。

でも、実際に本物のライフルを持ったときは、ものすごく重く感じました。

「SAR21」は弾倉に30発入り、1発発射、2発連射、3発連射まで

切り替えることができますが、訓練では1発ずつしか撃つことが

できませんでした。

 

射撃訓練場に行くと、100メートル離れた所に標的がありました。

標的は紙で出来ている人間の形をした模型でしたが、

100メートルも離れているので、

スコープを使っても、とても小さく見えました。

 

いよいよ引き金を引く時、

ちゃんと銃弾が発射されるのか、銃の中で破裂しないのかと不安になりました。

しかし、初めての体験で興奮して、アドレナリンが大量に出ていたためか、

スムーズに引き金を引くことができました。

引き金を引いた瞬間、「バーン!」という大きな音がして、

度肝を抜かれました。

耳栓をしていてもあまり効かなかったのです。

そして、撃った後の衝撃で右肩が後方に飛ばされそうになりました。

最初の一発目は緊張していたため、的には当たりませんでした。

実際に的に当てるのは難しく、ちゃんと風の向きや強さ、距離を

計算して撃たないと当たらないのです。

でも、私は二発目からは緊張もほぐれ、銃にだんだん慣れ、

的に当たるようになりました。

 

しかし、新兵の中には、気が弱くて、引き金を引けない人もいました。

でも、そういう人も兵士に怒鳴られて、無理やり、引き金を引かされていました。

かと思うと、ハイテンションで、撃つ気満々の人もいました。

私は、人は武器を持つと、性格も変わってしまうんだなあと、怖く感じました。

私自身も、正直、また撃ちたい、という気持ちになったのです。

人を殺すための訓練である、ということも忘れて・・・。

 

でも、訓練の後、「このライフルで人が殺されるのだ」と思い、怖くなりました。

今も世間では銃規制の話題が注目されています。

私の親しい友達のほとんどは、銃を持つ事に反対をしています。

「銃を持つ事で人格が変わり、人を思い通りに操ることができるようになってしまうのだ」

と言っていました。

私も、子供の頃から一回だけ本物の銃を撃ちたいと思っていましたが、

実際に撃ってみると、「銃を撃つ事によって戦争や憎しみのもととなるのだな」

と、何となく感じることができました。

                           (つづく)