シンガポール事情:兵役編その5

 

前回の記事はこち

 

軍隊生活2日目の夜、寝ようとしてベッドに入ると、

Tekong島に来る前の日のことを思い出しました。

シンガポール本土にはもう当分戻っていけず、

普段、何時にでも起きれて、好きなことができる自由な生活が

恋しく思い出されました。

 

家を出る前に、母親はあれこれいろいろと言いましたが、

「頑張れ! 2年間はあっという間に終わるから」と言われたことしか

覚えていません。

 

軍隊生活3日目は一番印象的な日でした。

なんと朝早くから汗をかかされる事態になりました。

起床のサイレンとともに、みんな下に集まらないといけないのですが、

早起きに慣れないほとんどの新兵達は、もうすでに下で腕立て伏せの

状態で待機してる人達に迷惑をかけているのです。

兵士の「早く下に降りてこい!」 と怒鳴る声しか聞こえなく、

自分の頭の中でも早く降りて来てほしいと思いました。

 

5分が経ち、ようやくみんな集まったところで腕立て伏せの態勢を

やめることができ、運動慣れしてない私は腕に力が入らなく、

腕を上に上げることもできませんでした。

 

新兵たちは初日と違った雰囲気で朝から緊張して、

何をやるにもスピーディーでした。

Tekong島での軍隊生活の恐ろしさを少しだけ知った新兵たちは、

おそらく Tekong島では何もいい事がないのかと絶望したかもしれません。

でも、私にとっては水をたくさん飲めることと美味しいブッフェ式の食事が

あっただけで救われました。

 

前回のブログで少し触れたのですが、軍隊では起床直後に、

まず第1回目の500MLの量の水を一気飲みしないと行けないのです!

そうです。

一日のうちに、

起床後、朝食前、トレーニング前、トレーニング後、

昼食前、夕食前、就寝前のなんと最低でも7回、飲まなければいけないのです。

午後にもトレーニングがある日は、9回も飲まされるんです!

 

皆さんも、もしよかったら、朝起きたら500MLの水を試しに一気飲み

してみてください!

とても苦しいと思います。

 

この500MLの水を飲むことをwater paradeというのですが、

新兵の親達は、息子が軍隊に入ったら、ろくに水も飲めずに

脱水症状になると心配していましたが、ところがどっこい、

逆に飲みすぎて低ナトリウム血症になるのかと思いました。

私は、それまで家ではあまり水を飲まなかったのですが、

軍隊に入り、どれだけ水が必要で大切なのかを学ぶことができました。

 

ところで、新兵たちが水を飲む前には、

loyalty to country(国への忠誠)

leadership(リーダーシップ)

discipline(規律)

professionalism(プロ意識)

fighting sprit(闘志)

と大声で叫ばなければいけません。

それがちゃんとできないと、水を飲むことはできないのです。

水のお話はここまでです。

 

さて、起床後に5BXをやり、朝食と清掃を終えた後に、

PINK IC(マイナンバーカード)を軍隊用の4Dナンバーカードと交換しました。

交換した瞬間、2年間の兵役義務が終わるまで、もうPINK ICを

見ることができないのかと思い、早く時間が経ってくれと思いました。

普段PINK ICは身分証明書でしかありませんでしたが、

PINK IC が恋しくなり、自由と喜びの証に変わったのです。

PINK ICは人に渡すことはありえないため、軍隊で簡単に交換したことは、

今思えば少しおかしく感じています。

 

4Dナンバーカードは、自分にふられた番号で、

緑色で「W2302」と書かれていました。

そうです。Tekong島にいる限り、私は「2302」と呼ばれたのです。

「W2302」を説明すると、まず、Wは「Wolf」といったところに所属し、

2302は2階の3号室の2番目なので、「2302」となっています。

皆さんは、「なぜ名前で呼ばれないの?」と思うかもしれませんが、

名前はユニフォームにあるネームタグを見ない限り、わかりません。

新兵達の間で仲がよくなると名前は知られていきます。

 

「2302」は私のアイデンティティとなり、

今でも忘れることができない番号になりました。

                        (つづく)