創作読物60「地頭がいいだろうから、これからグーンと伸びるかも」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「もしもし、私、神奈川西高校の平井と申しますが…。」

「ああ、平井さん?

 藤井です。こんにちは。」

「あ、先生、ご無沙汰しております。

 先日は、いろいろとありがとうございました。」

「あ、いえいえ。

 このあいだは、どうも。

 どうしました?今日は。」

「あ、ええ。

 飯塚陽香が、先生の所に行った、と聞いたもんで?」

「あ、情報が早いね(笑)。」

「いやいや。

 昨日、飯塚さんにお電話したら…、

 お母さんがそうおっしゃってたもんで…。」

「そうですか。

 陽香さんと、いろいろと話ができましたよ。」

「あのう…、

 彼女は、不登校のことも話したんですか?」

「あ、いやいや。

 何というか…、まあ、雑談ね(笑)。

 学校の件は、陽香さんが話したくなったら、

 話すんじゃないかな…、そのうちに。」

「そうですか…。

 で、すいません。

 突然なんですが…、

 今夜、またお邪魔しても大丈夫でしょうか?」

「うーん。

 今夜は、夜にお一人予約が入ってるので…。

 明日の夜なら、今のところ大丈夫なんだけど…。」

「そうですか…。

 明日は何時から大丈夫ですか。」

「7時以降なら、いいですよ。」

「じゃあ、7時ちょっと過ぎるかと思いますが、

 よろしいですか?」

「はい。

 じゃ、お待ちしてますね。」

「はい。

 ありがとうございます。

 では、失礼します。」

「はい、では明日また。」

                            

「こんばんは。

 平井です。よろしいですか?」

「あ、はい。

 どうぞ。開いてますよ。」

「はい、失礼します。

 あ、先生、すいません。

 また、お時間とっていただいて…。」

「あ、いいですよ。

 私も、平井さんと話すのは、楽しいし(笑)。」

「え?そうなんですか?」

「うん、まあね(笑)。

 まあ、お入りください。

 また、コーヒーでいいかな?」

「ああ、すいません。

 いただきます。」

「じゃ、ちょっと待ってて。」

                            

「はい、どうぞ。

 ブラックで良かったよね?」

「ええ、ありがとうございます。

 いただきます。」

「で、今日は?」

「あ、ええ…。

 あのう…、守秘義務ということで、

 きっと話していただけないかとは思うのですが…。」

「ああ、陽香さんと何話したかって?」

「ええ。

 そうですね。やはり、気になって…。」

「まあ、そうだよね(笑)。

 でも、ご賢察のとおり、伝えられないけどね(笑)。」

「ですよねぇ(笑)。」

「でも、陽香さんはとっても賢いねぇ。」

「そうですか?

 ほとんど授業出てないので、

 よくわからないんですけど…。」

「いや、賢いってのは、学校の勉強でなくて…、

 何というか…、直観力と言うか…、

 ものの見方、感じ方、考え方って言うか…。」

「はあ。」

「うーん…、 

 直観と言うか…、

 いや、まだ、直感のほうかな?

 直に感じる、のほうの直感ね。」

「直観と直感は、違うんですか…?」

「そりゃ、字が違うんだから、意味もちょっと違うでしょ。」

「あのう…、

 どう違うんですか?」

「感じるほうの直感は、

 まあ、勘に近いのかね。

 もう一方の観察の観の直観は、

 そう感じるのに、もうちょっとバックボーンがあると言うか…。」

「論理的と言うか…、

 それなりの根拠がある、ということですか?」

「そうだね。

 だから、陽香さんは、勘がいいと言うか…、

 とにかく、察しがいいんだよね。」

「そうですか…。

 いや、私は担任でありながら、

 彼女とは、まだ会話らしい会話ができていないので…。」

「そっかぁ。

 今度また、彼女、ここに来るから、

 そん時に聞いてみようか?

 平井先生が話をしたいって言ってるけど、

 どうする?って。」

「そうですね。

 藤井先生から言っていただくと、

 もしかしたら、彼女も嫌って言わないかもですね。」

「うん。

 わかった。聞いてみるよ。」

「はい。お願いします。」

「それにしても、彼女は、まだ知識も乏しいし、

 人生経験も当然少ないから、今のままでは限界もあるけど、

 地頭がいいだろうから、これからグーンと伸びるかもね。」

「地頭がいい…ですか?」

「うん。地頭。

 平井さんは聞いたことない?

 地頭がいいって。」

「ええ…、あまり…(笑)。」

 

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