創作読物121「少し前向きになれてきた感じ」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「陽香さん…、

 もしかして、希望というか、展望というか、

 これからのことで、何か考え始めたのかな?」

「え?

 なぜ、そう思うんですか?」

「うーん。

 なんとなくと言えば、なんとなくなんだけど…。

 ただ、失ったものより、得たもののほうが大きいと、

 思えるようになったということは、

 そういうことと言うか、なんか変化があったのかな、と思って。」

「うーん。

 実は…、

 まだ漠然となんですけど、

 私、高校は退学して、高等学校卒業程度認定試験、

 受けようかと思って。」

「ほう。

 昔の大学入学資格検定、いわゆる大検ね。」

「はい。

 2週間ぐらい前から、

 インターネットでいろいろと調べ始めて…。」

「そっか。

 で、大学を目指して、

 そのあとのことも、もう考えてるの?」

「いやあ、

 それこそまだ漠然としてるんですけど…。」

「けど?」

「けど…、

 心理学なんて、面白いかなぁ、なんて…。」

「ふーん、そうなんだ。」

「いや、でも、まだほんのちょっとだけですよ。

 それに、認定試験だってこれからだし。」

「まあ、陽香さんなら大丈夫だよ。」

「そうですかねぇ…。」

「それよりも、将来のことを考え出したってことが、いいよね。」

「ええ。

 少し前向きになれてきた感じ…、かな。」

「うん、うん。

 それ、お母さんとかは知ってるの?」

「あ、いえ、

 まだ誰にも言ってないです、先生以外は。」

「そうなんだ。

 でも、認定試験受けるんだったら…。」

「ええ。

 今週中には、とりあえず母には言おうと思ってます。」

「そう。

 それと、出願の仕方とか、

 受験科目とかで、担任の平井先生とも、

 連絡を取ったほうがいいんじゃない?」

「ええ。

 そうなんですけど…、

 私、平井先生とは、ほとんど話したことがないので…。」

「なに、

 電話しにくいの?」

「いえ、

 電話はいいんですけど、

 直接会うのは、なんか恥ずかしいというと変ですけど…。」

「なんだ、

 案外、人見知りするんだね、陽香さんは(笑)。」

「人見知りって言うのか、わからないんですけど、

 その人のことをあまり良く知らないと、

 なんか話しづらいって言うか…。」

「それを人見知りって言うんだよ(笑)。」

「あ、そっかぁ(笑)。」

「平井先生は大丈夫だよ。

 ここにも2回ほど来てくれて、

 いろいろとしゃべったけど、なかなかいい青年だよ。」

「先生…。」

「う?」

「もしよければ、

 先生とここで3人で話すことはできませんか?」

「ここで?」

「ええ。

 やっぱり、無理ですかね?

 先生も、お仕事お有りですし…。」

「あ、いやぁ、

 仕事はどうにでもなるので、

 大丈夫と言えば、大丈夫なんだけど…。

 でも、なんで、学校でなくて、ここがいいの?」

「ここだと落ち着く、

 というのが、一番の理由ではあるんですけど、

 それ以外にも…。」

「それ以外?」

「ええ。

 私、平井先生に伝えておきたいことがあって…。」

「どんなことを?」

「ええ。

 それはまだ今は、ごめんなさい、うまく言えないんで…。

 もう少し、考えを整理してから、

 ここで、先生と平井先生に聞いてもらいたいな、と。」

「そうなんだ。

 よし、じゃあ、いいよ、ここで3人で話そう。」

「ありがとうございます。

 じゃあ、私のほうから、平井先生に連絡を入れますね。」

「うん。

 夜の6時以降であれば、いつでもいいから。」

「ありがとうございます。

 わがまま聞いていただいて。」

「いや、

 陽香さんが、ここを選ぶというには、

 何か訳があるんだろうし…。

 私も、行きがかり上と言ってはなんだけど、

 何か、責任もある感じがするし。」

「じゃあ、

 私は、まず、認定試験のことを母に伝えて、

 了解を得てから、平井先生に電話しようと思います。」

「うん。

 それがいいね。

 お母さんは、何か言うかな?」

「いえ、

 母はたぶん応援してくれると思いますが、父は…。」

「反対されるかも?」

「たぶん、そうですね。

 でも、大丈夫です。説得します(笑)。」

「じゃあ、

 私は陽香さんからの連絡待ち、ってことでいいのかな?」

「はい、

 それでお願いします。」

 

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