創作読物 32「ニュージーランドのことなら、ある程度知ってます」

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

前回は、こちらから

 

「はい、もしもし?

 トリニティ・サロン エコル横浜です。」

「あ、藤井先生ですか?

 あのう、飯塚ですけど…。」

「あ、はい、藤井ですけど…、

 飯塚さんですか?どうなさいました?」

「あ、今、お電話大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。」

「あのですね…、

 実は…、さっきまで陽香の担任の平井先生が来てたんですけど…。」

「ああ、そうなんですか。」

「それで…、

 また、先生のことがちょっと話題になりましてね…。」

「ええ。」

「そしたら、平井先生が、今日もし行けたら、

 帰りに寄ってみようかなって…、先生の所に。」

「え?

 ここにですか?」

「ええ…。

 でも、行けたらって、おっしゃってたので…、

 ほんとに行くのかどうかは、わからないんですけど…ね、

 前もって、お伝えしておいたほうがいいのかなって、思って…。」

「ああ、そうなんですか…。わかりました。

 まだ、ちょっとやることがあるんで…、大丈夫ですよ。

 わざわざご連絡ありがとうございます。」

「いえいえ。」

「じゃあ、当てにしないで待ってますね(笑)。」

「あ、はい(笑)。

 なんか、私が言うのも変ですけど…、

 よろしくお願いします。」

「ははは。わかりました。

 それじゃあ、ありがとうございました。」

「はい。では失礼します。」

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(♬ ピインポーン、ピインポーン)

 

「あ、はい。

 ちょっとお待ちください。今、開けますんで…。」

「あっ、すいません。

 あのう、藤井先生ですか?」

「あ、はい。そうですが…。」

「あのう…、初めまして。

 私は…、飯塚陽香さんの担任の…、神奈川西高校の平井と申しますが…。」

「あ、はいはい。

 実はさっき、飯塚さんのお母さんからお電話いただきましてね。

 もしかしたら、平井先生がいらっしゃるかもしれないと…。」

「あっ、そうなんですか!

 いやあ、なんか、すみません。

 ほんとは自分で、予めご連絡しなきゃいけなかったんですけど…。」

「まあまあ、どうぞ。

 ここだと寒いので、まずは中にお入りください。」

「急に来て、大丈夫ですか?

 お仕事のお邪魔ではないですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。

 私も、お会いしたかったし…。」

「そうですか…。

 では、失礼して…、お邪魔します。」

「さあ、どうぞ、どうぞ。

 平井さんは、コーヒーは大丈夫ですか?」

「いやあ、もう、そんなお構いなく…。」

「いえ、ちょうど私も飲もうと思ってたところなんで…。

 ブラックでいいですか?」

「あ、はい。じゃあ、お言葉に甘えて…。」

「あ、じゃあ、そこに座ってもらえますか?」

「あ、はい。ありがとうございます。では失礼します。」

 

「はい。どうぞ。

 じゃあ、飲みながら、お話しましょうか?」

「あ、はい。

 ありがとうございます。いただきます。」

「えーと…。

 お話と言っても…、何から話しましょうか?」

「ああ、そうですね…。

 私から話さないと、いけないですね…。

 実は、今日の午後も、飯塚さんのお母さんと話してまして…。」

「ええ。そうみたいですね。」

「で、先生のことも話題になったんですが…。」

「そうですか…。

 道理で、午後、くしゃみがよく出ましたよ(笑)。」

「え?そうなんですか?」

「いや…、

 で、どんなことを話したんですか?」

「ええ、話したというか…、

 飯塚さんが、先生がこんなこと言ってたとか…。

 いや、実は先週もそうだったんですが…、

 飯塚さんが、こちらにいらっしゃるようになってから、

 よく、藤井先生のことが話題に上るので…。」

「そうなんですか。」

「ええ。

 それで、なんか、私も、お会いしたいなぁ、と思うようになって…。」

「そうですか…。

 で、飯塚さんはどんなことを話したんですか?」

「ええ。

 いろいろなんですけど…、

 私がちょっと興味を持ったのは…、フィンランドのことなんですけど…。」

「ああ、例のミクシィですか?」

「あ、いや、それは私も知ってたんですが…、

 実は、私は生物が専門なんですが…、

 学校現場に出る前に、教科だけでなく…、

 学校経営についても、ちょっと知っておきたいと思って…、

 教職大学院に入ったんですよ。」

「ほう、そうなんですか。」

「なので、フィンランドの教育の先進性も、ある程度は理解してるんですが、

 ただ、フィンランドの学校評価は、どうなってるのかな?と思って、

 藤井先生が、もしご存知なら…、と思いまして…。」

「そうですか…。

 外国の学校評価を勉強してるんですか?」

「あ、いや、日本のシステムについては、大学院で勉強したんですが、

 外国の様子は…、あまり、というか、知らないんですよね。」

「そうですか…。

 いや、私もフィンランドの学校評価のことは、わからないんですけど、

 ニュージーランドのことなら、ある程度知ってますよ。」

「えっ?

 ニュージーランドですか?」

「ええ。

 かなり進んでるんですよ。」

「へえー、全然知らなかったです。

 ニュージーランドは一度、専門の野鳥を観に行ったことがあるんですが…。」

「あ、それ、ひょっとして…、

 えーと…、ティリティリ・マタンギ島ですか?」

「あっ!えっ?

 なんでご存知なんですか?」

「あ、いえ…、私もちょっと行ってみたいと思ったことがあって…。

 鳥の楽園ですよね?」

「へえー、そうなんですかぁ。

 でも、私はマオリの文化のハカと鳥を観に行っただけなので…。」

「ああ、ハカね、いいですよね、あれ。」

「ええ、まじかで見ると、ド迫力でしたね…。

 でも、ニュージーランドの学校評価が進んでるなんて…、

 思ってもみなかったんで…。

 知ってれば、ちょっと調べることもできたと思うと…、

 ちょっと残念ですねぇ。」

「まあ、そうでしょうね…、知る人ぞ知るって感じですかね(笑)。

 でも、日本とは全然違いますよ、しくみが…。

 知りたいですか?」

「ええ、もちろん。

 お願いできますか?」

 

(つづく)

 

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