創作読物118「友だち思いな自分に、お互い酔ってた」
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
前回は、こちらから。
「先輩は…、
めぐみさんに、何て言ったんだろうね?」
「うーん。
わからないです。
ただ…。」
「ただ?」
「ええ。
初めは、私も、先輩が何を、どういうふうに言ったのか、
知りたかったんですけど…。」
「うん。」
「だって、
もし、それが事実と違うことだったら、
めぐみは誤解しちゃったわけだし…、
もしそうなら、何とかその誤解を解かないと、
私たちの仲は、元どおりにならないし…。」
「うん。
で、陽香さんは、めぐみさんに聞いたの?」
「何度も聞こうとしたんですけど…。
めぐみは、拒否するし、
そればかりか、ますます私を憎んだような目で見るようになって…。」
「そっかぁ…。」
「なので…、
私も、諦めた、と言うか…。」
「じゃあ、
真相は、未だにわからないままなんだね。」
「はい。
でも、もういいんです。」
「どうして?」
「もう、
そんなこと、どうでもいいやって感じに、次第になってって…。
気が付いたら、不登校になってた、
て感じですね(笑)。」
「そうなんだ…。
もしよければ、そのあたりのことを、
もうちょっと話してくれるかな?」
「あ、
そうですよね。
ある意味、そこが一番大切なところですよね(笑)。」
「もう、今なら、笑顔で話せる?」
「うーん。
そういうわけでもないんですけど…、
でも、そうですね…、
前よりも今は、ちょっと自分を客観視できる、かな?」
「うん。」
「つまり、
安田先輩が、めぐみに私のことを悪く言ったってことは事実だろうし、
それがわかれば、何とか元どおりの仲のいい親友に戻れるかもしれない、
というのはあったんですけど…。
でも、私、結局、失望しちゃったんですね。」
「失望?」
「ええ。
がっかりしちゃったと言うか、
安田先輩と、特にめぐみに対して。
結局、人間不信に陥っちゃった、ということですね。」
「うーん。」
「安田先輩はともかく、
特にめぐみに対しては、ショックでしたね。
私の言うことよりも、先輩の言うことを真に受けて、
もちろん、何を言われたのかは知らないけれど…、
なんで私に事実を確かめもしないで、
周りを巻き込んで、私をハブくようなことをしたのかと。」
「うん。」
「私たちの関係って、
そんなもんだったのかな、なんて考えると、
なんか、急に空しくなって来ちゃって…。」
「うん。」
「だから、
当時は、とても恨みましたよ、めぐみのこと。
親友だと思っていたから、なおさら。」
「うん。」
「でも、結局、親友ごっこをしてただけなんですね、私たち。」
「親友ごっこ?」
「ええ。
もちろん、そのことがある前は、
ほんとに何でも話せたし、
実際、いろんな悩みも言ったり、聞いたり…、
まるで、本当の親友同士のようでしたしね(笑)。
でも、
全然違ったんですね。
だから、親友で居るということに、
お互い自己満足してたと言うか…。
もしかしたら、
友だち思いな自分に、お互い酔ってた、というのが正解かな。」
「うーん。
なんか、文学的だね(笑)。」
「ああ、そうですね(笑)。
でも、実際には、親友どころか、
憎み合うようになっちゃって…。
だから、自分にとって都合の良い存在であればいいんだけど、
何か、不都合なことが起こると、
途端に牙をむく、というと大袈裟かもしれないけれど…。」
「でも、
実際、牙をむかれたんでしょ?」
「そうですね。
だって、本当の親友だったら、
何があったって、友だちを集団で責めたり、
いじめたり、ハブいたりなんて、しないですもんね。」
「そうだろうね。」
「でも、いいんです。
もしかしたら、私も親友ごっこに、酔ってたのかもしれないから。」
「自虐的になっちゃった?」
「そうかもしれません。
いろいろ考えてるうちに、
だんだん、気持ちが塞いできて…。
学校なんかも、どうでもよくなっちゃって…。」
「それが、
不登校になったきっかけだったわけかな?」
この続きは、こちら。
神奈川県立逗子高等学校教諭を経て、1995年度から神奈川県教育委員会生涯学習課にて、社会教育主事として地域との協働による学校づくり推進事業に携わる。
その後、神奈川県立総合教育センター指導主事、横浜清陵総合高校教頭・副校長を経て、2008年度から高校教育課定時制単独校開設準備担当専任主幹。
2009年11月、昼間定時制高校の神奈川県立相模向陽館高等学校を、初代校長としてゼロから立ち上げ、生徒に良好な人間関係構築力とセルフ・コントロール力育成をコンセプトとして学校経営に当たる。
2012年4月から神奈川県立総合教育センター事業部長を経て、2014年3月に神奈川県を早期退職後、学校法人帝京平成大学現代ライフ学部児童学科准教授として、教員養成に携わる。
2018年3月に大学を早期退職し、同年4月に、大学勤務の傍ら身につけた新手技療法「ミオンパシー」による施術所:「いぎあ☆すてーしょん エコル湘南」を神奈川県茅ケ崎市にオープンし、オーナー兼プレイングマネージャーとして現在に至る。
(社)シニアライフサポート協会認定 上級シニアライフカウンセラー。
今すぐ予約が確定するオンライン予約はこちらから
その他、お問い合わせ等は、0467-87-1230(やな、いたみゼロ)まで。